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オンプレミス型・クラウド型 中小企業による分散クラウドの利用について

次世代システムクラウド型サービス 業務改善

企業におけるシステムのあり方はオンプレミス型からクラウド型へと移行していると言えます。オンプレミス型とはITシステムの機器類などのハードウェアをユーザー(企業)が自社で保有している社屋やデータセンターなどの設備の中に物理的に設置して、そのITリソースをユーザーが自主的に管理・運用するような形態のことを言います。

一方でクラウド型とは、インターネットなどのネットワークを経由して接続することが可能な様々なサービスを提供することが可能な形態のことを指しています。このクラウド型サービスには、ハイブリッド・クラウド、マルチクラウド、分散クラウド、などいくつかの種類があります。

このように様々なクラウド型サービスがある中で、分散型クラウドとはどのようなものなのか、主な分散クラウドのタイプとは(オンプレミス・パブリッククラウド、IoTエッジ・クラウド、都市圏コミュニティ・クラウド、5Gモバイル・エッジ・クラウド、ネットワーク・エッジ・クラウド)、分散クラウドがもたらす効果とは(豊富な一気通貫のクラウド・エコシステムの提供、帯域・レイテンシなどの大幅な緩和、業務プロセス全体を自動化するハイパーオートメーション、など)、中小企業による分散クラウドの利用について、などについて解説します。

1.分散型クラウドとはどのようなものなのか

分散クラウド(コンピューティング)とは、クラウドで提供されるサービスに対してその定義に物理的な場所(拠点)を盛り込むことになった初めてのクラウドモデルです。従来は場所(拠点)はクラウド(コンピューティング)の定義とは全く関係がありませんでした。

現実的にクラウドサービスにおいて場所(拠点)は明確に抽象化されていました。そもそも論として、この抽象化された場所(拠点)の概念がクラウド(雲)コンピューティングという用語の誕生のきっかけになったのです。

分散クラウドには、(1)パブリッククラウド、(2)ハイブリッドクラウド、(3)エッジコンピューティング、という3つの起源があります。

<分散クラウドの起源>

  1. パブリッククラウド
  2. ハイブリッドクラウド
  3. エッジコンピューティング

1.パブリッククラウド

パブリッククラウドとは、業界や業種を問うことなく企業あるいは個人に対してクラウドコンピューティングの環境をオープンに提供している形態のことを言います。 パブリッククラウドでは専用ハードウェアなどを用意することは不要で、企業・個人では使いたい人が使いたいときに使いたいだけサーバー・ネットワークリソースを自由に使うことが可能なるシステムとなっています。インターネット上でオンライン申込をすることでその場ですぐにクラウドサービスを利用することができるのです。

2.ハイブリッドクラウド

ハイブリッドクラウドとは、異なる幾人かのユーザーと利用環境を共用することになるパブリッククラウド、ある利用者のみが専用で利用できる環境で提供されるプライベートクラウド、ユーザー本人が保有しているITリソース(資産)のオンプレミス、などを組み合わせることで、アプリケーションなどを動かすための管理、自動化された設定・調整、各アプリケーション間での簡素化された移行、などを実現することが可能なクラウドのインフラ(Infrastructure、インフラストラクチャー)のことを言います。

したがって、ハイブリッド・マルチクラウドとは、ハイブリッドクラウドの構成要素として複数から成るクラウド・サービス・プロバイダーによるパブリッククラウドを組み合わせたインフラのことになります。

3.エッジコンピューティング

エッジコンピューティングとは、その名称の通り、エッジで利用されるコンピューティングデバイス、あるいはコンピューティングパワーを利用する処理のことを指します。ここでのエッジとは、データの収集や利用する際の端の部分、を意味しています。つまり、データが発生している源や利用する場所に近い部分、という意味になります。簡単に言うと、各現場にコンピュータ端末を設置して、その現場ごとに自律的に分散化する形で情報処理を実施する仕組みのことを意味しているのです。

分散クラウドでは、クラウドサービスを提供しているパブリッククラウドのプロバイダーが、分散されている各サービスの、保有、運用、管理、更新、などに関して責任を負うことになります。この点は、多くのパブリッククラウドサービスにおけるリソースの集中管理型モデルなどからの大きな変化になります。分散クラウドの普及は新たなクラウドサービス提供に向けて新時代のエポックメイキングになるでしょう。

一方で、分散クラウドに対しては、単なるエッジコンピューティングなのでは?という声があるかもしれません。分散クラウドにおけるインスタンス(実体)はエッジコンピューティングのインスタンスでもあります。しかし、エッジコンピューティングにおける全てのインスタンスが分散クラウドとは限りません。エッジの多くの利用ケースにおいては、パブリッククラウドのプロバイダーがサービスの進化レベルと環境の運用水準をマネージすることもあればしないケースもあるので、前述した疑問への応えはイエスでもありノーでもあると言えます。

2.主な分散クラウドのタイプとは

分散クラウドの起源として前述したように3種類を挙げて説明しましたが、分散クラウドの主なサービス形態として以下の5つを紹介します。

<5つの分散クラウドのサービス形態>

  1. オンプレミス・パブリッククラウド
  2. IoTエッジ・クラウド
  3. 都市圏コミュニティ・クラウド
  4. 5Gモバイル・エッジ・クラウド
  5. ネットワーク・エッジ・クラウド

1.オンプレミス・パブリッククラウド

オンプレミス・パブリッククラウドとは、その名称の通り、オンプレミス型のパブリッククラウドサービスのことを言います。オンプレミスとは、一般的には、サーバー、ストレージ、アプリケーション・ソフトウェア、といったIT基盤を自社・自前で保有・運用することを指しています。簡単に一言で言うなら自社運用のことになります。

広い意味では借りているデータセンターなどの場所も自社管理をしている場合にはオンプレミスになります(データセンターは、サーバー・ネットワーク機器などを備え付けて運用・管理する施設のことを言います)。

したがって、オンプレミス・パブリッククラウドとは、組織内のデータセンターにおいてパブリッククラウドサービスを展開することを意味しています。ここで言う組織とは共通しているサービス上に構築することが可能です。また、パブリッククラウドサービスのプロバイダは、運用制御の機能(コントロールプレーン)とシステムセキュリティの狭間(境界線上)を管理することになります。

そもそもクラウドとは、プライベート型のクラウドサービスを除いて、プロバイダーが構築したIT基盤をクライアントが利用して、運用・管理も業者にお任せする形態になるので、オンプレミス型のクラウド、という言葉は自己矛盾のような気がします。

しかし、前述したように、オンプレミス型のパブリッククラウドサービスのプロバイダの管理対象は、「運用制御の機能とシステムセキュリティの狭間(境界線上)」となっていますので、「オンプレミス型のパブリッククラウドサービス」という形態が提供可能になっているのです。

2.IoTエッジ・クラウド

IoTエッジ・クラウドとは、エッジデバイスとダイレクトに対話することが可能な分散型のサービスのことを言います。エッジデバイスとは、インターネットに接続された製品・装置のことを言います。

前述したように、エッジコンピューティングとは分散処理能力を有していることをその特徴としており、モバイルコンピューティング(移動が可能な環境(モバイル環境)において携帯タイプのコンピューターと連動することで、音声や画像などを用いて相手とコミュニケーションをする方法のこと)とモノのIoT(インターネット)技術とを可能にできるオープンタイプの分散型ITテクノロジーのことです。

エッジコンピューティングにおいては、音声や文字などのデータはデータセンターに送信されることなく、デバイス本体から、あるいはローカルPCやローカルサーバーで処理されることになります。

つまり、エッジコンピューティングでは、IoTデバイスが作成した様々なデータ類をデータセンターやクラウドなどの遠い地点に送る必要はなく、IoTデバイスの近く(デバイスの付近)で処理することが可能になります。このように、コンピューティングの作動がネットワークの最前線(エッジ)」に近付くことにより、重要データを企業はリアルタイムとほぼ同様のタイミングで把握・分析することが可能になります。したがって、IoTデバイスでこれまで以上に迅速かつ効率的にデータの送受信をすることができます

この技術はローカルでプライオリティ付けをデータに対して行ってくれるので、センポラルレポジトリ(複数のデータが体系に則って整理・保管されているデータベースのこと)に集中することになるバックホール・トラフィック(末端へのアクセス回線と中心部の基幹通信網とを繋ぐ中継回線を通る通信量のこと)を軽くしてくれる利点があります。このメリットは、WiFiなどへの依存率を軽減してくれる、という点で非常に重要になります。

3.都市圏コミュニティ・クラウド

都市圏コミュニティ・クラウドとは、複数のクライアントと接続する都市または都市圏(メトロエリア)の各機器やシステムなど(これをノードと言います)に対して分散して提供することができるクラウドサービスのことを言います。

近年では、首都圏などの大都市圏においては地縁的な繋がりによって形作られている「地域コミュニティ」の機能が著しく低下していると言われています。しかしその一方で、地震や台風などの自然災害や新型コロナ感染症や犯罪などに対する不安や心配など、その地域が抱えている様々な課題が大きくなっている状況下では、たとえ都市圏であっても、そこで生活している住民が相互に助け合う意識がますます重要になっています。

災害が発生した際の被災者に対する支援や住民自身による防犯活動などが実際に効果を上げている事例もあり、都市圏コミュニティにおいてもクラウドサービスを活用して地域の安全・安心を確保することは極めて重要だと考えられます。

4.5Gモバイル・エッジ・クラウド

5Gモバイル・エッジ・クラウドとは、5Gを活用した通信ネットワークの一部として提供される分散型のクラウドサービスのことです。5Gとエッジコンピューティングとの組み合わせは、一体不可分の関係にある、極めて相性が良い、などと言われており、実際に上記の2つのテクノロジーの相乗効果はとても高く理想的であると言っても過言ではないようです。

理由としては、当該データが作成されたデバイスやローカルPC・サーバーで処理することになる分散タイプのオープンIT技術=「エッジコンピューティング」の能力がこれまでの4Gの10倍以上速く通信することができる5Gの能力でより強化されることになるからです。

上記の5Gエッジコンピューティングのテクノロジーの組み合わせは、システム・アプリケーションのパフォーマンスを飛躍的に改善するとともに、大量のデータをリアルタイムで処理することが可能になる、と多くの業界関係者は考えています。また、ある実務家は、5Gをエッジコンピューティングに使用する大きな理由は、各IoTデバイスなどの間を往復するデータの遅延時間を低減するため、としています。

ただし、両者の組み合わせに対して課題を指摘する声があることも事実です。エッジコンピューティングのテクノロジーはだいぶ成熟してはきているが、エッジコンピューティングを利用したビジネスモデルは現在ではまだ新しく誕生しつつある状態である、というものです。

例えば、まだエッジコンピューティングを利用したデータセンターの最適な配置に関してはまだ結論がはっきりしていないケースが多いと考えられています。従来は、エッジデータセンターをどれだけモバイルアイテム(要素)の付近に設置する必要があるのか、が議論の中心になっていました。また、初期のエッジコンピューティング事例は既に実施されていますが、この新しいIT基盤の費用負担を誰がするのか、遅延とバックホール・トラフィック減少で享受できるメリットを誰が受けるのか、などについてはまだ課題が残っている、とされています。

5.ネットワーク・エッジ・クラウド

ネットワーク・エッジ・クラウドとは、基地局、接続装置(HUB)、ルータ、といったネットワークや基盤と繋がるように設計されたクラウド型サービスのことを言います。簡単に言うと、エッジ・クラウドの利便性をインターネットの世界まで拡張したサービスです。

3.分散クラウドがもたらす効果とは

分散クラウドにおいては、パブリッククラウド型サービスを提供しているプロバイダーのサービスでは、特定の様々な物理的な「場(拠点)」に“分散”されることになります。クラウドサービスが提供する機能を必要としている利用者にとって、物理的にも近接した「場(拠点)」でサービスが運用されることになるので、遅延することが少ないコンピューティングを実現することが可能になります。

また、上記のようなサービスの運用による一貫したコントロールプレーン(ネットワークの制御を担うモノのこと)を用いて、パブリッククラウドからプライベートクラウドに至るまでのクラウド基盤を管理・統制して、両方の環境における一貫した拡張性確保も可能になります。そのため、データの遅延問題を解消することでパフォーマンスを大きく向上させるのみならず、グローバルなネットワークに関連付いているサービスの停止リスクやコントロールプレーンの非効率性リスクなども軽減することができるのです。

前述したような分散クラウドでは、クラウドPC、ストレージ、ネットワーク機能、などをを提供するようなサブステーションを構築することになり、戦略的に設置されます。サブステーションは、クラウドで「疑似アベイラビリティゾーン*」として機能することになり共有されることになります。

*アベイラビリティゾーン
アベイラビリティゾーンとは、障害の発生を防ぐために、一つ以上のデータセンターを冗長化された光ファイバ回線で繋いで、データセンター同士を冗長化すること、を言います。

分散クラウドにおけるサブステーションに対しては、提供元であるパブリッククラウドのプロバイダーが運営・管理の責任を負うことになります。したがって、生産性やサポートなどについては、クラウドサービスとして提案価値がある重要な利点にに関してはそのままの状態で維持されることになるでしょう。

現実的に、多くのクラウドサービスのプラットフォームは2024年までには、何らかの分散クラウド型のサービスを、そのサービスを必要としている利用者に近い「場(拠点)」でで実行・提供するようになると見込まれています。

分散クラウドがもたらすその他の効果としては、

  • クライアントのデータ保管場所に関したレギュレーション(規制)の要件遵守レベルの向上
  • ネットワークにおける障害発生リスクを軽減。なぜならば、クラウドサービスはローカル上に(あるいはセミローカルのサブネット上に)に存在しているので、ネットワークの接続が断続的に途切れても稼働することが可能であるためです。
  • クラウドサービスがホストされる(機能を提供される)場所やコンピューティングゾーン(利用される場所)の数量と可用性が大きく増加

といったものを挙げることができます。

4.今後の分散クラウドの展開

これから分散クラウドの利用方法に関しては2段階で進化することになると予想されています。最初の段階においては、前述したハイブリッドクラウドの代替手段として企業への導入が進展するものと考えられます。ハイブリッドクラウドと同じような効果と遅延から発生している課題を避けることを企業は目指すことから、分散クラウドであるクラウドサブステーションを入手(購入)するものと見込まれています。

このようなクライアントは、自社で購入したサブステーションを地理的あるいは業種的に近いユーザーにオープンにする(開放する)、といった思考を初期の時点では受け入れないので、オンプレミスの状態でサブステーションを自社のみで利用する、と予想することが可能です。このような方法を採用して、パブリッククラウドのプロバイダーに全責任を負わせることで、本当の意味でのハイブリッドクラウドを実現することが期待可能になります。

次世代のクラウドへと向かうための次の段階(第2段階)においては、パブリックサービス(公共サービス)を提供している役所や企業(通信会社など)などがクラウドサブステーションを購入し、地理的あるいは業種的に近いユーザーにオープンにします(開放します)。

このような展開をうけて、ようやく分散クラウドは次世代のクラウドコンピューティングのインフラ(基盤)である、という考え方が多くの人々の間に根付き始めるものと考えられるのです。また、このような公的機関や企業などの動きは、分散クラウドが広範囲に行き渡っていく必要性が現れているとも言えます。次世代のクラウドは、クラウドサブステーションがあたかもコンビニにおけるWi-Fiのホットスポットと同じように、どこにでも存在しているという状態を前提として機能を発揮しているということです。

第1段階でも第2段階でも、拠点は再度トランスペアレンシーな(透過的な)状態になります。分散クラウドにおいては、クライアントはプロバイダーに、具体的に「ポリシーAを遵守して遅延状態であるBを抑制するためにはCが必要になります」といったような運用の条件を指定することで、自動的かつ透過的にプロバイダーに構成をしてもらうことが可能になります。クラウドサービスにおいては将来的には上記のような方法が一般的になっていく可能性が高いと考えられています。

5.中小企業と分散クラウド

多くの中小企業においては自社でITリソースを抱える負担が重いことから、企業システムのクラウド化は大きな課題のひとつとされていました。中小企業が企業システムにクラウドサービスを利用しようとしている理由は主に以下の理由によります。

<中小企業がクラウドサービスを利用する理由>

  1. 時間を短縮
  2. 無駄なコストの削減
  3. システムの利用状況に応じたフレキシビリティ(柔軟性)
  4. 堅牢なセキュリティ確保

1.時間を短縮

クラウドサービスを利用する最初の理由としては時間を短縮できることが挙げられるでしょう。クラウドサービスでは、ハードウエア、ソフトウエア、ともにネットワーク上に置かれており、そのままサービスを使うことができるので、新たなシステムアプリケーション開発や利用開始の際に迅速に対応することが可能です。自前で(オンプレミスで)ハードウエアを購入したりセットアップしたりすると、そのプロセスだけでも月単位の工数が必要になってしまうでしょう。

2. 無駄なコストの削減

次にコスト面での利点を挙げることができます。自前でITシステム設備を用意する場合(オンプレミスの場合)には、一般的にはその購入費用を固定費として減価償却することになるのですが、クラウドの場合には使った分だけを支払う従量課金システムが基本でしょう。稼働のピーク時を事前に想定して普段は余剰といなってしまうリソースを自社で持つよりも、システムの利用状況に相応しい利用料金を支払うことにより費用の削減に繋がるものと期待ができます。

3. システムの利用状況に応じたフレキシビリティ(柔軟性)

上記のようなクラウに特有となるサービス提供の形態は、ITシステムのフレキシビリティ(柔軟性)を向上させるという利点ももたらすことになります。なぜならば、急激な事業の拡大、極めて短期間におけるサービスの利用、事業の抜本的な見直し、などに適切に対応して使うリソースをフレキシブルにアレンジ(調整)することが可能になるからです。

4.堅牢なセキュリティ確保

自社にとって重要なデータは外部のネットワーク上に置いておくよりも、自前のサーバー内に格納・保管しておいた方が安全だろう、という考え方も従来は確かに否定できない面がありました。

しかし、何度も被害を受けている自然災害やサイバーテロ攻撃などから自社の重要データを守るためには、IT設備を物理的に分散して配置したり、最新のセキュリティ・テクノロジーを導入したりすることが必要になってしまいます。

しかしながら自社保有のIT設備にこのようなセキュリティ対策を実施することは際限があいません。そこで多くのパブリック型のクラウドサービスでは、最新のテクノロジーと設備によって高度なセキュリティ対策を実施しており、コンプライアンス面も含めて各国のレギュレーション(法的な規制)にも対応が可能になっています。

このように中小企業にとっては、クラウドサービスの利用に関しては大手のクラウドサービス提供企業からのサービスを利用しているだけの状態に留まっているのが現状と言えます。つまり、一部の中小企業ではオンプレミス・パブリック・クラウドの利用は開始してはいるものの分散クラウドを活用する段階までに至っている中小企業は非常に少なということが言えるでしょう。

主な分散クラウドのタイプや分散クラウドの効果などで説明したように、分散クラウドはクラウドサービスの中でも進化した形と言うことができますが、中小企業においてはITを担う専門家の育成が簡単ではなく、分散クラウドの導入に関しても大手のサービスプロバイダに言われるままに従ってしまうリスクがあることは否めません。

6.分散クラウドに対する課題

今後、分散クラウドモデルがもっと広範に普及していくためにはこの分散クラウドモデルにおけるいくつかの課題を解決する必要がある、と考えられます。主な課題は以下の通りです。

  1. 分散クラウドのサブステーションにおいてパブリッククラウド機能をどの程度利用することが可能なのか
  2. これは、分散クラウドの定義そのものを揺るがせるような大きな問題ではないものの、分散クラウドにはどのような形式(バリエーションのこと、例えば、完全に分散されているのか、それとも部分的に分散されているのか、など)が求められているのか、ということを左右するような要因になるでしょう。
  3. 分散クラウドのサブステーションに関してはそのようなカスタムされたシナリオが誕生してくる可能性があるのか
  4. 分散クラウドのサブステーションが近隣企業にオープンにされる(開放される)ような場合に効果的な運用を実施するために必要な帯域幅へ拡大するための費用をどのようにして誰が負担するのか
  5. いくつかの企業でサブステーションを共有するようなケースでは、どのような売上モデルを設定・採用するのか。具体例としては、サブステーション近隣の利用企業は利用料金を元々提しているクラウドのプロバイダー業者に支払うのか、またははじめにサブステーション設置を頼んだ企業に対して支払うのか、といった点を決める必要があります。
  6. 分散クラウドのサブステーションが常にネットワークに接続している必要の有無の確認。または、接続の有無に関係なく、稼働が可能なような設定はできるのか。

まとめ

本稿では、どうして分散クラウドは次世代のクラウドコンピューティングを支えることが可能なのか、パブリッククラウド、エッジコンピューティング、ハイブリッドクラウド、などと比較した場合の分散クラウドのメリットは何か、ということについて説明をしてきました。

企業のIT部門の責任者(CIO、Chief Information Officer)にとっては分散クラウドの考え方そのものが今後のクラウド進化に対する道標となるでしょう。特に、分散クラウドは分散した環境においてクライアントに届くような新しいオポチュニティ(機会)を必要としているIT部門の責任者や特定拠点に向けて遅延リスクの低いサービスを求めているIT部門の責任者に対して大きなメリットをもたらすことになるでしょう。

分散クラウドの最初の段階においては、従来のハイブリッド・クラウドを代替する手段としてクラウドのサブステーションを利用することにより、クラウドがもたらすことになる価値のある利点を無駄にすることのない理想的なハイブリッド・クラウド・コンピューティングを実現することができるでしょう。

そして次の第2段階においては、クラウドのサブステーションを近隣の利用者にオープン化する(開放する)取り組みが拡大していくことにより、分散クラウドが次世代のクラウドコンピューティングの強固なインフラを形成していくことになるでしょう。

 

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