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中小企業にも必要な中長期経営計画の概要と策定手順

中長期計画の策定手順 業務改善

ウィズ・コロナにおける厳しい経営環境下において安定した経営を続けていくためには何が必要になるのでしょうか。現代はデジタル・テクノロジーの急激な進展とその活用により競合企業との明確な差別化をしにくくなっています。つまり、自社が知っている情報は競合他社も当然知っているので、その情報に基づいた各社の施策が似通ってしまい、結果的にどの企業の商品やサービスであっても特徴的な違いをアピールすることが困難な時代になっている、と言えるのです。

このような状況において、中小企業であっても、自社の中長期的な目標・計画を設定して戦略を考えて実行している会社は、スタンスがブレずに計画の実行に邁進することが可能になります。中長期経営計画の策定は、計画策定のプロセス上で自社内の環境と課題を再認識することが可能で、自社が今後実行すべきことを明確にすることができます。また、役職員も共有した目的を常に意識したうえで働くことが可能になるので、会社全体の生産性向上にも貢献することになります。

本稿においては、中長期経営計画とはどのようなものか、中長期経営計画のメリットとデメリット、中長期経営計画策定の方法と手順、などについて解説します。

1.中長期経営計画とは

中長期経営計画とは、中長期的に企業が目指す「あるべき姿」と現時点における自社の状況との差異(ギャップ)を埋めるための計画を指しており、中長期的な経営構想(ビジョン)を実現するために、今後の3年間から5年間にやるべきことを可視化したものとなります。なお、今後10年間の計画を長期計画と呼んでいるケースもあります。

(1)中長期経営計画策定の目的と効果

<中長期経営計画策定の目的と効果>

  1. 自社の現状課題の整理
  2. 目標に向けてやるべきことを明確化
  3. 従業員に考える習慣が根付きモチベーションも向上
  4. 対外的な信頼度のアップ
  5. 経営層のビジョン共有

①自社の現状課題の整理

中長期経営計画は、前述したように、自社の本来あるべき姿と現状の姿との差異(ギャップ)を埋めるために必要となる経営計画のことを言います。したがって、中長期経営計画の策定に際しては、当然ながら、自社の現時点における状況や問題点などを整理することが必要になります。

この現状整理のプロセスにおいて、従業員数や年齢構成(年齢ピラミッド)、退職の可能性がある従業員や育休や介護休暇を取得しそうな従業員の人数、といった各組織や各職場の内部的な労働環境に関する様々な情報を整理することが可能になります。また、マーケットの状況、マーケットにおける自社や競合他社のシェア(占有率)、などの外部環境に関しても定量的に把握・認識することができるまたとない機会とも言えます。

②目標に向けてやるべきことを明確化

次に挙げるのが、これから経営の目標に対して企業が実践すべき具体的なアクションを明確にすることができる、というポイントです。中長期経営計画の策定に際しては、上述したように、企業の現在の状況や経営課題などをきちんと整理して、その整理した事柄から経営目標をクリアするために具体的にどんな施策を実行すればよいのか、を示すことが必要になります。

そのためは、経営目標に対して従業員数をどれほど増員が必要なのか営業に必要となる素材や材料はどれだけなのか、などを定量的に検討して決めることが重要になります。こうした具体的な今後のアクションや達成しなければならない定量的な数値が明確になることで、より具体的なアクション・プランを立案することが可能になります。

③従業員に考える習慣が根付きモチベーションも向上

次は、従業員に考える習慣が根付き、さらにモチベーションも向上することが期待できます。経営陣のみならず従業員にとっても大きなメリットにもなると考えられます。中長期経営計画策定に従業員自身が大いに関わることによって、経営目線から考えてみるという癖が日常的に身に付くことになり、日常業務においても自らよく考えたうえで創意工夫するようになる、という変化を望むこともできるでしょう。

また、はっきりとした明確な目標が設定されており、その目標を達成するため方向性や道筋が可視化できてきるのとできていないのとでは、従業員の積極性やモチベーションにもも大きな差が生じてしまうでしょう。現時点で自社が、どのようなポジションに立っていて、どのような方法を利用して、どのやって進んでいくか、を明確に示すことによって、従業員のやる気も高まって一体感も生まれるでしょう。

④対外的な信頼度のアップ

策定した中長期経営計画を社外に対して公表する、ということが必要にはなりますが、確固たる中長期経営計画を立案することが可能であれば、その企業に対しては社外からの信頼が高まる、ということも十分なメリットとして考えられます。

具体的には、取引金融機関や取引先には、これまでの実績のみならず、将来のビジネス・プランや事業構想などを伝えることによって、より一層安心して取引を継続してもらえることが期待できます。また、自社商品やサービスのお客様には、中長期経営計画を通じて、自社の事業構想(ビジョン)などを伝えることによって、自社が提供している商品・サービスをりようすることの意義や意味合いをアピールして、これまで以上に応援をしてもらえるきっかけを作ることも可能です。

⑤経営層のビジョン共有

多くの経営者は、自社をどういった企業に育てていきたいか、という理念や理想像を持っていると思われます。中長期経営計画を立案することにより、こうした理念や理想像を自社の全ての従業員に対して浸透させることが可能になります。企業が向かっている方向や、理念や理想像を実現するために何をすることが必要か、ということを従業員が理解することが、実現のための効率的な推進には必要になるのです。

2.中長期経営計画のメリットとデメリット、そして「落とし穴」

中長期経営計画には、年度事業計画や企業理念などとの位置付けの違いから以下のようなメリットやデメリットがあると考えられます。

(1)中長期経営計画のメリット

  1. 戦略的な投資に対する社外への理解促進
  2. 従業員の不安の解消と士気の向上
  3. 次世代の経営者の育成

①戦略的な投資に対する社外への理解促進

前述したように中長期経営計画を社外に公表するようなケースも多いと考えられますが、戦略的な投資は短期的には業績悪化に繋がってしまう場合もあり得ます。対外的に公表された中長期経営計画において、戦略投資は将来的な成長を見据えて実行するものであることを明確にしておけば、株主などの理解も得られるものと思われます。

特に将来がはっきりとは見通しにくい環境であっても、企業としての将来の方向性を示す必要がある上場企業においては、中長期経営計画は将来の指針を示す重要なツールとして位置付けられるものになります。

②従業員の不安の解消と士気の向上

従業員にとっても中長期経営計画の策定は非常に重要なものになります。将来が見通せない経営環境下にあって、自分が勤務している会社は大丈夫だろうか、潰れたりしないだろうか、という不安や心配を抱えている従業員は少なくないものと考えられます。こうした従業員に対して、会社としての生き残り策や成長するための方針などを明確に提示することで、これからの安心して働くことができるという気持ちを持ってもらうことが可能になるし、会社全体の士気を盛り上げることもできるでしょう。

③次世代の経営者の育成

3つめのメリットは、次代を担う経営者の育成に役立つ、という点を挙げることができます。多くの企業では、もう少しで役員になれそうな管理職を中心にプロジェクト・チームを組成して、中長期経営計画の原案を策定することが多いようです。中長期経営計画の策定には、経営者の俯瞰的な視点からの戦略策定能力や企画力などが求められることになります。したがって、次世代の経営者の育成には格好の場であると言うことができるのです。

(2)中長期経営計画のデメリット

  1. 策定には多大なリソースが必要
  2. 中長期計画を策定した後にも一定の見直しが必要
  3. 当初の予定通りに達成される確率は低い

①策定には多大なリソースが必要

中長期経営計画の策定のためには非常に多くのリソースを割かなければならないことがデメリットのひとつと考えられています。中長期経営計画の策定に要する期間は3ヶ月から半年程度と言われており、会社によっては、企業全体の中長期経営計画だけでなく、事業部別、カンパニー別、機能部門、などの中長期経営計画も策定しなければならない場合もあります。

上記のような中長期経営計画も策定するとなると、9か月くらいの時間が必要になることも考えられます。次期役員候補とされる管理職を含めた中長期経営計画策定のプロジェクトチームを組成するようなケースでは、長期間に渡ってプロジェクトメンバーは通常業務にプラスする形で工数を捻出する必要があるので、負担は決して軽くはないものと思われます。

②中長期計画を策定した後にも一定の見直しが必要

中長期経営計画の実行期間中に、想定外の環境変化によって、当初想定したようには計画が進捗していかないこともあり得るでしょう。このような状況下にあるにもかかわらず、当初の計画に固執してしまい実際の状況から乖離したアクションを続けてしまうことには大きなリスクがあると言わざるを得ません。

もし毎年の事業計画を策定する場合には、現実からズレた中長期経営計画はいったん棚上げされてしまい、毎年の事業計画にはなんら反映されることのない無駄な存在になってしまう可能性があります。そうした事態を避けるために、毎年中長期経営計画にローリング(当該年度の中朝域経営計画をレビューしてから次年度の中長期経営計画を新たに策定・修正を実施すること)をする企業もあります。

ただし、頻繁に中長期経営計画のレビューや見直しを繰り返すことになってしまうため、計画を実行するということが疎かになってしまったり、間接的なコスト増加してしまったりするという危険性がある点には注意が必要です。

③当初の予定通りに達成される確率は低い

そもそも中長期経営計画を策定することで満足してしまい、必要なチューニングもせずに実施が疎かになってしまうケースが非常に多く見受けられるので、当初の中長期経営計画通りに計画が達成されるケースは極めて稀である、というのが実態です。このような状況を受けて、全ての企業が中長期系家計画を策定しているわけではなく、いくつかの企業では「あえて」中長期経営計画は策定しない、と決めているケースもあります。

その理由としては、3年後あるいは5年後の姿を予想して計画を立案しても思った通りには進まないだろうし、もしそうなった場合には社員の士気低下に繋がってしまう(京セラ)、日々変化している事業環境にフレキシブルかつスピーディーに対応するためには、中長期経営計画から単年度の経営基盤の強化方針へシフトする(日本製粉)、というものを挙げている事例があります。

これまで説明してきた中長期経営計画のメリットやデメリットを十分に踏まえて、中長期経営計画の策定に踏み切るのかどうかの判断は慎重に行う必要があるでしょう。前述したように、中長期経営計画通りに計画が達成されることは少ないのが実状ですが、そのパターンと対策について紹介します。

(3)中長期経営計画が陥ってしまう「落とし穴(失敗要因)」と対策

<中長期経営計画が失敗するパターン>

  1. 自己満足型中長期経営計画
  2. ストレッチレス中長期経営計画
  3. 後は任せた中長期経営計画

①自己満足型中長期経営計画

自己満足型中長期経営計画とは、経営トップの思いや過去の成功体験ばかりが優先されてしまい、具体性や裏付けが欠如している計画のことを言います。具体性が欠けている中長期経営計画とは、ダントツの商品力強化、抜本的なコスト構造の見直し、革新的なテクノロジーによる付加価値の向上、などの耳障りのよいキーワードが並んで意欲的な定量目標が掲げられてはいるものの、その具体性には何ら触れられていないものを指します。

上位下達や面従腹背のような企業風土の会社では、経営層の意向に沿うような全方位型で支障が少ない中長期経営計画を策定はするものの、それは単なるお飾りとしての存在になってしまう可能性が高いでしょう。

具体性のない中長期経営計画よりも悪いのが、裏付けがない中長期経営計画だと言えます。裏付けに説得力がない中長期経営計画とは、マーケットにおける自社のポジションや競合他社の動向などをまったく把握・分析しない状態であるにもかかわらず、例えば、市場占有率(シェア)トップを奪い返すために世界レベルで最先端の工場を建設・展開する、という方針を決めてしまうことを言います。

そこにはビジネスを展開する根拠となる裏付けがあるわけではなく、経営層の熱意や成功体験しかないにも関わらず、その部下たちも上長たちの思いを斟酌してしまい、楽観的な将来予測に基づいて資金投下が実施されてしまうという事態が生じてしまう懸念があります。

このような失敗は、遠慮なくモノを言い合える企業風土が醸成されてないことが原因のひとつなので、経営者自身が率先して日常的に現場の従業員と対話を実施する、ということが重要な対策であると言えます。また、企業内における部分最適ではなく全体最適を図る必要があるので、組織横断的な施策を実行する責任者を設置することも重要です。組織横断施策実行責任者は、必要に応じて、事業軸と機能軸を変更することが必要になるので、組織体制そのものを見直すこともあり得るでしょう。

また、中長期経営計画の細かい数値目標までは公表していない企業も多いものの、詳細な定量的な数値目標までも対外的に公表して退路を絶ってしまう、という対策も考えられます。これは退路を絶つことが目的ではなく、実際に実行することが可能な、具体性のある裏付けがある中長期経営計画を立案することに繋がることに十分に資すると考えられるからです。詳細な数値目標の公表は、株主などの投資家も高く評価するものと考えられます。

②ストレッチレス中長期経営計画

ストレッチレス中長期経営計画とは、本社内の各事業部の間や事業部と各子会社の間で十分な牽制機能が働かずに、これまでの延長線上でしか考えられない中長期経営計画のことを言います。事業部門の中長期経営計画に携わっている企画担当者が自部門の利益代表者(代弁者)になってしまい自部門の課題や問題点をオープンにせず隠してしまうことや、経営企画部門が現場のビジネスを知らないので現場にモノを言えなくなってしまうこと、で重要なビジネスの撤退判断が遅れてしまうようなことが考えられます。

大企業の場合は特に上記のようなな牽制機能の不足が顕著であると言えます。このような状況で策定される中長期経営計画は、現場から上がってくるそれぞれの計画を積み重ねただけの、いわゆる「ホチキス中長期事業計画」となってしまうおそれがあります。これは事業部と各グループ会社との間でも同様のことが言えます。原因としては、本社経営企画部門(あるいは本社事業部門)の弱体化、各事業部門(あるいは各グループ会社)のトップ自在の能力・スキル不足、を挙げることができます。

こうした事態を避けるためには、中長期経営計画策定プロジェクトに参加しているメンバーの意識改革が必要になります。自分が所属している部門の利益を代表するのではなく、自部門の課題を常に気にしていて他部門の課題にも興味を持っているような、全社的な視線で物事を捉えることができるような人をメンバーに選ぶべきでしょう。

また、各事業部門や各グループ会社に、トップダウンの要素を考慮した、ガバナンスの仕組みを整備することも必要になります。具体的には、グループ会社の中長期経営計画の未達成は所属している事業部門の責任であることを明確にしておくことです。であれば、前述した「ホチキス中長期経営計画」のような計画は、本社事業部からのグリップが十分に強くなることが期待できるので、少なくなっていくものと考えられます。

そして、最も重要な対策が管理会計制度の整備になります。例えば、グループ会社別のB/SやP/Lなどは整備されてはいるものの、各グループ会社の、事業別、製品別、などのB/SやP/Lなどを把握しているケースは少ないのではないでしょうか。そのため、製品別の売上や粗利目標などを設定したり、コストを抑制する検討したりすることができないのではないでしょうか。数字による管理は、時には冷酷ではありますが、経営環境が複雑化している現在の環境下では適切な経営判断を行うためには管理会計の精緻化が求められていると言えるのです。

③後は任せた中長期経営計画

後は任せた中長期経営計画とは、中長期経営計画は策定はしたものの、それ以降の実行が遅々として進まない計画のことを言います。中長期経営計画の策定プロジェクトメンバーには理解できるものの、実際に計画の実行を担当する管理職や従業員には理解してもらえない計画は、文字通り、絵に描いた餅に過ぎません。また、中長期経営計画の達成レベルと業績評価がリンクしていないような場合には、もしも計画を達成できなくても自分の評価が下がることはないので、誰も計画達成に向けて努力をすることはないでしょう。

こうした状況を防ぐためには、現場に対して中長期経営計画の内容を何度も説明して(複数回の職場説明会の開催など)、多くの社員に理解を深めてもらうことが重要になります。また、人事評価と中長期事業計画(を受けた具体的なアクション・プラン)の進捗をリンクさせることも必要になるでしょう。

3.中長期経営計画策定の方法と手順

中長期経営計画のメリット・デメリットと陥りがちな「落とし穴(失敗事例)」について説明しましたが、実際に中長期経営計画を策定するためにはどのようなステップで進めていけばよいのでしょうか。

<中長期経営計画を策定するためのステップ>

  1. 自社の経営理念(ミッション、ビジョン、バリュー)を明確に定める
  2. 自社の現状を正しく把握する
  3. 社外の環境を正確に認識・分析する
  4. 中長期的な経営戦略を決める
  5. 具体的な数値目標や行動計画を作る

(1)自社の経営理念(ミッション、ビジョン、バリュー)を明確に定める

中長期経営計画を策定する場合には、自社の経営理念を明確に設定することが最初のステップになります。経営理念とは、経営におけるミッション(自社が社会に対して果たすべき役割やどうやって社会に貢献していくのかという存在意義のと)、ビジョン(企業が目標とすべき姿のことで、具体例としては、3年後までにヨーロッパ進出を果たす、5年後に売上高100億円、という定量的な目標のこと)、バリュー(企業としての行動規範や価値観のことで、具体例としては、顧客ファーストの原則に基づいて行動します、クレーム対応は誠実かつ真摯に対応します、のようなお手本やルールのことです)、の3つのファクターに分解することができます。

中長期経営計画とは、こうした経営理念を全ての役職員で共有したうえで実現していくためのものになります。したがって、中長期経営計画を策定する前に、経営理念の内容を再確認したり、場合によっては見直ししたりすることが極めて重要なステップになるのです。

(2)自社の現状を正しく把握する

第2のステップとしては、自社の現状に関して正確に把握することが必要になります。自社の強みや弱み、問題点や課題、などを冷静かつ客観的に捉えることが重要です。また、財務諸表上の決算に関する情報などは当然ながら、自社あるいは自社グループ会社の従業員数や年齢別・性別の構成比率、などの人的資源に関する情報、それぞれの事業部における販売力、製品・サービスの企画開発力、今後の成長性、企業風土、なども把握・分析対象のデータ・情報になります。

(3)社外の環境を正確に認識・分析する

第3のステップでは、自社が置かれている外部環境に関して正確に認識・分析すること、になります。ライバル企業(競合他社)が現在どういった状況にあるのか、を分析することも含まれます。具体的にはライバル企業の、ビジネス戦略、マーケットにおけるシェアやポジション、競合している製品やサービスの価格・クオリティ(品質)・機能、来なり企業の技術力(テクノロジーの開発や活用の能力やスキル)、今後の自社が属しているマーケットの将来的な成長力、顧客に関するトレンド(傾向)、などを把握・分析することになります。

(4)中長期的な経営戦略を決める

第4ステップは、第2と第3のステップによる分析結果に基づいて、具体的に、どこでビジネスを展開するのか、どのビジネスに注力をするのか、などのビジネスドメインを決定するプロセスになります。

中長期経営戦略を立案する場合には、自社の本業は何なのか、自社ビジネスのドメインは何なのか、ということをあらためて確認することが必要になります。そうした再確認をしたうえで、*SWOT分析などを利用して、最も自社の強みを活用するためにはどこを攻めればよいのか、といったことを分析して中長期的な戦略を立てることになります。

*SWOT分析
SWOT分析とは、市場のトレンド、ライバル企業、法律、などの自社を取り巻いている外部的な環境と、自社が保有している資産、ブランド力、そして商品やサービスの価格や品質などの内部的な環境をプラスの面とマイナスの面に分類して分析する方法のことです。企業の経営戦略の策定、マーケティングにおける意思決定、経営リソースの最適な配分、などを実行するための有名な考え方の枠組み(フレームワーク)の1方法です。SWOTとは、Strength(強み)Weakness(弱み)Opportunity(機会)Threat(脅威)、の4要素の頭文字をつなげたもので、スウォット分析、と読みます。

<SWOT分析表の例>

プラス要因 マイナス要因
外部環境 Strength
(強み)
Weakness
(弱み)
内部環境 Opportunity
(機会)
Threat
(脅威)

ビジネスドメインに基づいて戦略を立案することになるので、当社はもともとIT企業ではあるけれども、これから儲かっていく可能性が高いので、今巷で大いに流行っている飲食店を中心顧客にしたデリバリー・ビジネスのフランチャイズとして加盟しよう、といった考え方は生まれにくくなると考えられます。ビジネスドメインに基づく戦略立案は、よく赤字企業にありがちな、経営理念に沿っていない(反している)ビジネスにまで手を出すようなリスクを抑制・回避することが可能で、中長期的な視点を持って事業戦略を考えることができるようになるでしょう。

(5)具体的な数値目標や行動計画を作る

前述した経営理念(における、特に、「ビジョン」)を達成するためには上記の第4のステップで決定した経営戦略に基づいて具体的な定量目標や数値目標とともに行動計画(アクション・プラン)を作成することが必要なステップになります。考え方としては、設定したビジョ達成するためには、どのくらいのリソースが必要になるのか、といった有用な逆算的な方法を用いて具体的な定量目標・数値目標を決定することがおすすめです。そして、決定した定量目標・数値目標をクリアするためにそれぞれの部門がどういったアクション(行動)をすべきか、というより具体的な行動計画(アクションプラン)のレベルまで落とし込むことも必要になります。

なお、中長期経営計画の実現可能性をより高めるためには、策定後の定期的な進捗状況のモニタリングが必要になります。このモニタリングは、中長期経営計画の進捗度合いを認識するのみではなく、必要に応じて追加リソースを投入したり、アクションプラン(行動計画)を変更したり、という計画の調整が必要になるタイミングを見極める、という点においても極めて重要なプロセスであることを認識しておくことが大切になります。

まとめ

中長期経営計画とは、策定が完了してしまったらそれで終わり、というものではありません。中長期経営計画は、実は、策定してからがより重要になります。前述したように、中長期経営計画の内容を各部門における行動計画(アクションプラン)のレベルまで落とし込んで、それぞれの従業員がやるべきことを理解して実際に行動できる状態になることが重要なのです。

そのためには、それぞれの部門における管理職(マネージャーやリーダーなど)が中長期経営計画の内容をきちんと正しく理解して自分が所属している部門の現場のレベルまで具体的な業績目標や行動計画(アクションプラン)にまで落とし込むことが重要かつ必要になります。現場レベルに近ければ近いほど、具体的なタスクに落とし込んだうえで、期限を設定しないと、個々の社員の行動様式には変化が生じないでしょう。

せっかく時間とリソースを注ぎ込んで策定した中長期経営計画が、単なる絵に描いた餅になってしまわないように、現場レベルまで浸透させて組織のレイヤー(階層)に相応しいPDCAサイクルを回していくことが極めて重要になります。

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