「共創」とは、英語で「Co-Creation(コ・クリエーション)」というマーケティングの用語ですが、昨今特に「共創ビジネス」に大きな注目が集まっています。「共創」とは、文字通り、「共」に「創」る、という意味ですが、利用者や商品・サービスの提供者などのさまざまな立場の人々が、利害関係をお互いに有しているステークホルダー同士でコミュニケーションをしながら新たなビジネスにおける価値を「共」に「創」ることが共創ビジネスの定義です。
本稿においては、共創ビジネスとは(定義、注目されるようになった背景、など)、共創ビジネスの種類、共創ビジネスの実現に必要なもの、共創ビジネスのメリットとデメリット、共創ビジネスのメリットとデメリット、具体的な共創ビジネスの事例紹介、共創ビジネスを実践するために必要なことは、などについて詳しく解説します。
1.共創ビジネスとは
(1)共創ビジネスの定義
「共創」は、ミシガン大学ビジネススクールのC.K.プラハラード教授とベンカト・ラマスワミ教授が「The Future of Competition: Co-Creating Unique Value With Customers(邦訳:価値共創の未来へ―顧客と企業のCo-Creation)}という共著作で提唱した考え方とされています。
つまり、「共創」とはさまざまなステークホルダーと企業とが協働して一緒に新しい価値を創造するという概念である「Co-Creation」の和訳のことです。したがって、「共創ビジネス」の定義とは、さまざまな立ち位置の人々が利害関係を有しているステークホルダーとコミュニケーションしながら新たな価値を共に創るビジネス、になります。
この定義における重要なポイントは、利用者を単なる消費者として捉えるのではなく、新たな商品サービスを生み出すためのパートナーとして捉えている点にあります。広い意味での「共創ビジネス」とは広く社会に対して新たな価値を提供可能なビジネス形態、のことを指しています。
これまでは、大部分の企業においては新たな商品の開発、などのモノの提供が中心となって市場占有率(市場シェア)を獲得してきました。しかし、人々や社会のニーズが多様化している状況下においては、次から次に新たな商品を開発し続けなければなりません。
しかし、半永久的な新商品開発を継続することは非常に困難なことです。また、ある領域の産業内には非常に多数の企業がひしめいており、その多数の企業の中からクライアントに選定されることは簡単ではありません。現在では、商品やサービスにプラスアルファの付加価値を提供しなければ、競合他社と比較した優越性を明確にすることは困難でしょう。
(2)共創ビジネスが注目されるようになった背景
最近では、DX(デジタル・トランスフォーメーション)、ビジネスのDigital化、攻めのIT、などの言葉がまるで社会的な正義のように巷に溢れているが故に、企業の経営者や事業部門にとっては、従来以上にITの活用が必要不可欠になっているという雰囲気には抗えなくなっている、のではないでしょうか。
もちろん、会社として、経営者として、何とか対応しなければいけない、とは考えてはいるものの、正直何をどのようにすればいいのかかが分からない、という企業は多いのではないでしょうか。最先端のIT技術を利用しているユーザー企業に対して、どこにどのような課題があるのかを教示して頂ければ解決案を提示します、といったところで、そのユーザー企業はただ困ってしまうだけでしょう。
こうしたユーザー企業との関係を変えて、共にて新たなビジネス価値を創出していきましょう、という思いに基づいて「共創」という概念を掲示することには大きな意味があります。しかし、「共創」という言葉だけが一人歩きしているようなケースもまま見受けられます。つまり、共創ビジネスが注目されるようになったのは、業界内において競争の優位性を喪失してしまった企業の、「競争優位の終焉」に理由があるのです。
「共創」をビジネスの経営方針として掲げるのはけして悪いことではないのですが、「共創」を単なる「お題目」に終わらせないためにも、具体的なアクション・施策へと結び付けることが必要です。「お題目」で終わってしまえば、現場の混乱だけがますます拡大してしまうことでしょう。具体的な共創ビジネスの注目の背景は以下の通りです。
<共創ビジネスの注目の背景>
- いつでもどこでも、が可能になったパラダイムシフト
- 市場の価値観の変化がものに対する意識も変えた
- 「コミュニケーション」よりも「コラボレーション」よりも「共創(コ・クリエーション)」
共創という考え方がどうして求められるようになったのか、という背景を考察場合に欠かせないファクターとしてICTの発達を挙げることができます。1995年頃のインターネット元年以降から普及してきたインターネットを経由した情報の流通網は、現在では「あること」が当然になっています。つまり、どこにいてもいつであっても情報を双方でやり取りすることができる世の中、つまり、高度な情報社会を現実のものとして、のやり取りができる」、「いつでもどこでも連絡を取り合うことができる」世の中、つまり情報社会を実現のものとしてきたのです。さらにデジタル技術の急激な進歩に応じて多数かつ多様で革新的なコミュニケーション・ツールが創出されてきました。
例えば、スマートフォンなどのモバイル端末によって、誰でもどこでもいつでも、情報をやり取りすることができたり、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の利用により、個人同士を繋いだコミュニケーション、あるいは個人的な情報共有が促されたり、また、Wikipediaのような万人が利用可能なインターネット百科事典の登場により様々な知識を集約させている「集合知」を利用することによるメリットを教授できたり、するようになっています。
上記のようなICTの進歩によって到来した情報社会は、グローバルベースの情報ネットワーク出現させることにより国境を跨いだ国際的なコミュニケーションの機会を増大・加速させることになりました。さらには、そうしたコミュニケーションに要するコストも限りなくゼロの水準に近づけることにより、地球の反対側にいる人々とも気兼ねせずにコミュニケーションすることが可能な、距離・時間・空間のそれぞれが近接している社会を現実のものにしてきました。こうした距離・時間・空間の近接が、我々の日々の暮らしやビジネスにおいて非常に大きなパラダイムシフトを生じさせてと言えるのです。
上記のパラダイムシフトの具体的な内容は、消費マーケットに対する価値観の変化、従来の製品ライフサイクルに関する変化、「モノ」対する意識の変化、です。
高度化された情報社会では、我々の趣味や好みに対応して、個人が必要とする情報を大量に入手可能なようになっています。消費者は自分の要望に合致した商品やサービスなどに関する情報を取捨選択できるようになっているので、各個人が自分の要望を充足させるためのその人だけのための消費活動をやりやすくなってきています。こうした消費行動の変化に呼応するように消費者の要望はますます細分化・多様化していくことになり、消費マーケットにおいては価値観の変化が見受けられるようになってきたのです。
加えて、ますます高速化する情報流通ネットワーク上では、我々の消費活動も同様に高速化してきました。消費活動の高速化は、商品やサービスの、導入、成長、成熟、衰退、という製品ライフサイクルをより早いスパンで回転させることになるので、製品やサービスのライフサイクル自体が短期間化しているという結果を生み出すようになっています。
価値観の変化は、消費マーケットの多様化や市場のや製品・サービスのライフサイクル短縮化と対応するので、サプライ・サイドである企業は多種多様な製品・サービスのアイデアを短期間の内に必要とするように変わってきたのです。こうした環境下では、企業が自社組織内の限定されたリソースだけで対応することが困難になってきたので、不足するリソースを社外に求める動きが活発になってきたのです。
また、消費者が「モノ」の所有に対する認識を変えてきている、という点も見逃せません。「モノ」の所有は豊かさを手に入れること、と考えられていた時代から、個人が「モノ」を所有せずに他人と「共有(シェア)」することで豊かさを感じる時代へと変化してきているのです。
具体的には、公共交通ネットワークが顕著に発達している現在では、特に都市部であれば、自家用車を消費者が購入しなくても特に不便は感じないので、自家用車を購入するよりも、必要な場合に自動車を利用することで全くもファイはない、考え方が増えるようになりました。現実にそうした考え方に基づく「カーシェアリング」のサービスは、都市部を中心にして需要を著しく増やしています。
本来、以前からコミュニケーションやコラボレーションを活性化することが企業の組織などにおいては極めて重要であることは言われてきました。それなのに、なぜ今になって「創る」というファクターが重要視されるようになってきたのでしょうか。
これまで説明してきたように、一般の社会では「モノ」に対する人々の意識が「所有」から「共有(シェア)」へと変化する中で、消費者は消費するタイミングの経験を大切にするようになってきている、とされています。いわゆる「モノ」消費から「コト」消費への変化です。
そうなると、消費者が求めている経験を正しく創出するためには何が必要なのか、という回答を求めるためのマーケティングの方法として共創が注目されるようになってきた、とも言えるのです。新たに製品やサービスなどを開発する場合に、消費者自身にも開発のプロセスに参加してもらって、消費者が価値を感じるファクターを抽出して製品やサービスに入れ込むことが可能です。そして、そうしたプロセスを通して利用者としての経験価値をアップしてもらったうえで口コミなどを活用した期待値を向上させる、という戦略も考えられます。
2.共創ビジネスの種類
共創ビジネスのタイプには共創する相手方との関係性から、以下の3種類のタイプに分類することができます。
- 双方向(インタラクティブな)関係
- 共有の関係
- 提携の関係
(1)双方向(インタラクティブな)関係
これまでのように、一方的に商品やサービスを提供するのではなく、フラット・オープンな立ち位置で企業と利用者が一緒になって価値の創造に取り組む関係が共創ビジネスの特徴になります。企業と利用者た対等な関係で議論を進めることで、企業の課題を検討・取捨選択する、といった新しいビジネスモデルを構築する方法のひとつになります。
(2)共有の関係
私企業、諸団体、行政主体、など、多種多様なレベルの組織において、同様の目的を有しているコンソーシアムやコミュニティのようなフラットでオープンな関係を構築する点も共創ビジネスの特徴です。参加している人々が各自自分の役割に責任を持って、テーマを共有し知恵を出し合うことで価値を創造するという取組を指しています。
(3)提携の関係
3つめの共創ビジネスの特徴は、自社では不足しているファクターを補足しようと考えている企業が、企業のサイズなどによる上下関係や業界における障壁を排除して、他社から協力を得ることで新たなアイデアを創り出す点になります。従来の垂直統合型ビジネスにおいては、競合他社との競争激化や商品やサービスの技術開発費の高止まりなどの課題が生じてしまうことから、社外(他社との)連携によってパートナーシップを醸成させて新しい価値創出が求められているのです。
共創ビジネスにおける関係性は、激化するビジネス環境の変化に対応するためには必要かつ不可欠な要素なので、ビジネスモデルを企業が新規に構築する場合の拠り所になると考えられるのです。重要なことは、自社の強みや弱みを正しく認識したうえで、共創によって相互補完ができるビジネスの運営体制を構築することができるのか、という点になります。
3.共創ビジネスの実現に必要なもの
<共創ビジネスの実現に必要なもの>
- 「技術」を共有すること
- 「価値」を共有すること
- 「体験」を共有すること
(1)「技術」を共有すること
「技術」の共有とは、共創している相手先(パートナー企業)が有していない絶対的・圧倒的な技術力を共創する仲間に提供すること、を意味しています。先進的なITテクノロジーを武器にして、ビジネスの差別化や競争の優位性を実現を目標とする共創パートナーは、そうしたITテクノロジーを内製化する方向へと舵を切るでしょう。ですが、共創パートナー内に必ずしも高度なITテクノロジーを駆使できるような人材がいるとは限りません。そのため、こうした人材不足を補足するためのニーズが必ず発生します。
上記の「高度なITテクノロジーを駆使できるような」力とは、少ない手間や時間を使って最大の成果(パフォーマンス)を発揮することが可能な力を意味しています。具体的には、「できうる限りステップ数を少なくして実現したい機能を構築できる能力」や「システム運用できる環境を駆使することで運用可能なクラウド環境を1日でいくつも築き上げることができる能力」などを挙げることができます。事業のテーマが決定すれば、人工知能(AI))やInternet of Things(IoT)などを活用して、こうした能力を実際に装着したビジネスの工程(プロセス)をデザインすることが可能な力も求められるようになると考えられます。
(2)「価値」を共有すること
次に、「価値」を共有することは、理(ことわり)を誠実に尽くし、ビジネス上の課題を明確化し、共にこの取組を成功させたい、という情熱(パッション)お互いにを示し合うことを意味しています。共創パートナーという、同じビジネス価値を相互共有してこそ、お互いの企業間の信頼関係は醸成されるものと考えます。
共創パートナーの目線で考えた場合には、全幅の信頼を寄せて任せることができるパートナーでなければ、我々の大切なビジネスを「一緒にやりましょう!」となならないでしょう。「一緒にやりましょう!」と思ってもらえるようなパートナーの人格も共創における重要な必要条件となります。
(3)「体験」を共有すること
企業が成長したり生き残ったりするために必要な要件が、さまざまな不確実性に対応していくことです。具体的には、*アジャイル開発や*DevOps、クラウドの活用が当たり前になり、コンテナやマイクロサービス、サーバレスなどが注目されるようになったのは、まさにこのような背景があるからです。
アジャイル開発とは、現在の主流である、システムやソフトウェアの開発手法のことで、計画 → 設計 → 実装 → テスト、という開発プロセスを機能単位のような細かいサイクルで繰り返す点に最大の特徴があります。
DevOps(デブオプス)とは、開発担当者(チーム)と運用担当者(チーム)とが相互に連携、協力して、柔軟かつ迅速にソフトウェアを開発する手法のことです。DevOpsは、人(チーム)、開発手法、開発ツール、などを相互連携させて、開発チームと運用チームそれぞれのサイロ化(システムや業務のプロセスなどが、他のアプリケーションや他事業部門などとの連携をする前に完結してしまい孤立してしまうような状態のこと)を回避します。
こうしたテクノロジーを使いこなして、共創パートナーの教師のような立場になって、パートナーに体験させて、教えてあげることが必要です。理詰めで教えるのではなく、凄さや良さを感じてもらい、そしてやりたいという欲求を自活的に生じさせることができれば一過性のものには終わらない継続性も生じるのではないでしょうか。
上記の3つの必要なものの関係性を主体的にリードすることによって、こういう人々とであれば是非一緒になって取り組んでみたい、と共創パートナーに惚れ込んでもらうことが極めて大切なのです。そして、こうした人生観、働き方、考え方、といったものを感染させて、共に共創パートナーの改革に資することが、「共創ビジネス」を実践することになるのです。
4.共創ビジネスのメリットとデメリット
冒頭に説明したように「共創」とはマーケティングにおいて使われる用語です。そこでマーケティングの観点から「共創ビジネス」にはどのようなメリットがあるのか、以下に説明します。
(1)共創ビジネスのメリット
<共創ビジネスのメリット>
- 消費者に目線を置いた商品・サービスの開発が可能
- 長期的に自社商品・サービスのファンが増加
- 新たな可能性の発生
- リソースの補完
- シナジー効果の獲得
消費者と共に実施する共創マーケティングには、一般生活者である消費者の声を聞くことが可能になる、という極めて大きなメリットが考えられます。消費者自身が持っているアイデアを反映・実現した商品・サービスに対しては、深い愛着心が湧くと共にヒット商品となる可能性をも秘めているでしょう。例えば、消費者による投票で決定した商品・サービスはメディアから大きな注目を浴びることになって話題も集めるかもしれません。ただ、必ずしも消費者の声が正解になるとは限らない点には注意が必要です。実現の可能性を熟考しつつ消費者の「生の」声をヒントや契機にして「共に創る」ことこそが大切なのです。
消費者と一緒にアイデアを生み出して商品・サービスの開発を実施するプロセスでは、企業が消費者にとって親近感を持てるような存在へと変化していくでしょう。加えて、自ら関与した商品やサービスには強い思い入れを持つようになるのではありませんか。共創ビジネスのマーケティングに主体的に参加した消費者は、商品・サービス・企業、の長期的なファンと化してくれる可能性があるのです。
他の企業や消費者共創することで従来は考えもしなかったアイデアを生み出すことができるかもしれません。社内のリソースを利用するのみでは実現することが困難だったことも実現可能になる可能性があります。他社の視点を組み込むことでこれまでは気付くことができなかったお客様のニーズや提供する商品やサービスの可能性が顕在化してくるかもしれません。
企業が新たなビジネスなどへと展開するケースでは、全てを自社だけで対応できるとは限りません。自社内では保有していない様々なリソース(技術、人材、ノウハウ、情報、顧客基盤、など)を有している外部の企業・個人と共創することで、新規ビジネスの土台を円滑に強化することが可能です。
具体的には、海外市場で新たに自社製品を展開することを考えた場合に、海外の拠点やコネクションを既に保有していない場合には一からの基盤を構築しなければなりません。このような場合には多くの時間とコストが必要になってしまい、場合によってはビジネスチャンスを逃してしまうかもしれません。
しかし、当地の顧客のニーズや市場動向などに詳しい企業と共創することが可能になれば、販路の開拓や拡大も効率的に進めることが可能になるでしょう。また、わが国の市場とは異なる現地の好みや価値観などの現地化(ローカライズ)も意識しつつ事業戦略を立案して、製品・サービスの販売の実施・拡大に繋げることも可能です。
企業が共創してビジネスを実施することにより様々な相乗効果が生まれます。この効果を「シナジー効果」と呼んでいます。共創のシナジー効果には生産シナジーと販売シナジーの2種類があります。
生産シナジーとは、例えば生産拠点のライン、倉庫、営業所、などを共に利用することによって物流費用を削減したり稼働率をアップさせたりすることが可能になることです。まあた、販売シナジーとは、販売店舗や販売スペースを共有したり共創する企業同士の統一ブランドイメージを作成・活用することによって売上がアップすることです。
(2)共創ビジネスのデメリット
<共創ビジネスのデメリット>
- お客様からの多量かつ良質なアイデアの誘因(自発的なビジネスへの悪影響)
- お客様からの期待と提供物との関係性を管理する必要性
- ネガティブな口コミも管理しなければならない
- 技術盗用やノウハウ流出などのリスク
- 自社都合のみで共創を解消することが難しい
共創ビジネスにおいては、共創している他社やお客様から自社では生まれにくい斬新なアイデアに基づいた商品やサービスの開発が可能になります。自社だけでは成し得なかった成功を手に入れることができる、という素晴らしい経験を得たことになります。そのこと自体は高く評価すべきではありますが、そうした状態が長く続くと、自社以外のアイデアや発想に頼るような企業体質になってしまい自発的に新たな業品やサービスを開発しようという気概が失せてしまう可能性が考えられます。
共創はあくまで「共に創り上げる」ことが目的なのであって、一方的に他社やお客様に依存することではありません。こうした状態に陥らないためには、自社が共創パートナーに提供したアイデアと共創パートナーから提供してもらったアイデアの件数、実現した件数、収益効果、などを把握したうえで詳しく分析することが必要になるでしょう。共創基盤があるから自主的なビジネス開発は不要というわけではない、という点は、経営者のみならず全ての社員が共通して認識しておくべきだと考えます。
共創ビジネスにおいては、お客様からのアイデアに基づいて新たな商品やサービスの開発に繋がることも多いものと考えられます。お客様のアイデア通りに新商品・新サービスを開発すれば必ず成功するとは限りませんので、実際の開発プロセスにおいては自社独自のアイデアを散りばめることも多いのではないでしょうか。
しかし、お客様の立場からは自分のアイデアを盗用して商品やサービスを作り上げた、と誤解されてしまう可能性もあります。もし訴訟のような大事になった場合には企業イメージにも傷が付いてしまう可能性があります。したがって、お客様が自分のアイデアの反映を期待している部分はここで、ここは自社のアイデアを組み込みました、という情報を管理して、場合によっては公開することも必要になる可能性があります。
共創ビジネスに関しては、自社のみならず共創しているパートナーも含めて、ネガティブな口コミ攻撃に晒される可能性があります。このような場合には、共創パートナーとも一丸になってネガティブな口コミには対処する必要があります。間違っている口コミにはファクト(事実)に基づいてきちんと反論をし、自分たちに誤りがあれば素直に謝罪して同じことは繰り返さないための対策まで説明する、という姿勢が高い評価に繋がるのです。
共創ビジネスにおいては、お互いが保有している技術・情報を共有して活用できるメリットがある一方で、自社の技術を盗まれたり、ノウハウが漏洩したりリ危険性も十分に考えられます。したがって、自社の独自技術やノウハウなどを遵守するためにも、信頼できる共創パートナーを選定したうえで、NDA(秘密保持契約)をあらかじめ結んでおくことも必要です。
共創のメリットがなくなってくると共創関係を解消することも考えるようになると思われますが、一方的に自社だけの都合で共創関係を解消することが困難なケースもあり得るでしょう。共創パートナーとの契約を結ぶ前段階でパートナー企業や個人に関する調査、分析、共創による効果とリスク、などをあらかじめ考えておくことが必要になります。
まとめ
規制緩和やハイパーコンペティション(グローバル化の急激な進展で経済活動(具体的には、人の流れ、お金の流れ、情報の流れ、など)が、ボーダーレスに往来するようになること)によって大きく変化している現在の市場で生き残っていくためには、自社の力だけでは難しいかもしれません。
そうした環境下でインターネットの劇的な進化によって、若い世代だけではなくシニア世代も含めて、幅広い年齢層と簡単にコミュニケーションをすることが可能になっています。そして、利用者と企業とが共にビジネス実施する「共創ビジネス」が誕生しました。「共創ビジネス」はこれまでのビジネスモデルとは一線を画している戦略と言えます。「共創ビジネス」は従来にはなかった経験を利用者と一緒に創出することが可能でしょう。
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