多くの場合、株式会社では決算確定後3ヶ月以内に定時株主総会を開催します。【中小企業は基本決算後二ヶ月以内に税務署へ申告するのでその前に株主総会を催します。大企業は三ヶ月以内なのですか?】
定時株主総会とはどのようなものなのか、定時株主総会の準備や召集・決議手続きなどついて説明します。
1.定時株主王総会とは
定時株主総会について会社法では、毎事業年度の終了後一定の時期に招集する、計算書類は定時株主総会の承認が必要、取締役は事業報告の内容を定時株主総会に報告する、と定められています。
つまり、全ての株式会社において定時株主総会は毎年必ず最低1回は必ず開催され、貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書などの計算書類の承認や取締役による事業報告が実施されることになります。
定時株主総会のほかに臨時株主総会というものがあります。
これは取締役を補充するための選任手続きや新株予約権の発行などを決めるもので、臨時に開催される株主総会のことです。
臨時株主総会は定期株主総会が開催されていることを前提に開催されます。
つまり定期株主総会を開かずに臨時株主総会だけを開くことはできません。
また臨時株主総会は開催期日の1週間前までに(非公開会社の場合)召集通知を発送することが必要です。
臨時株主総会は必要な時に開催されるものです。
2. 定期株主総会の開催時期
会社法には定期株主総会の開催時期について明記されてはいませんが、前述の通り、中小企業では法人税の定めに沿って(法人税法74条)、決算確定後2ケ月以内に定時株主総会を開いているケースが圧倒的に多いと思われます。
ただし、監査が必要な大企業などは申告の延長手続きを利用して(法人税法75条の2)、決算確定後3ケ月以内の定時株主総会の開催を定款に定めているケースもあります。
これは定時株主総会の「基準日」に大きく影響されているからです。
会社法では、株式会社では一定の日を「基準日」として、その基準日時点で株主名簿に記載されている株主(この株主を基準日株主と言います)を、株主としての権利行使が可能な人と定めています。
そして、定時株主総会では年度事業報告をする必要があるため、多くの株式会社において定時株主総会の基準日を「事業年度の最終日」と定めているのです。
基準日から2か月以内に基準日株主の権利行使を行う必要があるため、定時株主総会の基準日を事業年度の最終日としている企業では、事業年度が終了してから2か月以内に定時株主総会を開催しているのです。
3.定時株主総会の開催準備
定時株主総会を開催する前に計算書類の作成や事業報告に関する書類の作成をしなければいけません。
また、この計算書類などは、会社の本店に定時株主総会開催日前後の一定期間は備え置いておかなければいけません。
取締役会設置会社の場合は、計算書類や事業報告について、定時株主総会を開催する前に監査役の監査を受けなければいけません。
また、取締役会の承認も受ける必要があります。
さらに、計算書類などは、定時株主総会の開催日の2週間前から5年間、本店に備え置く必要があります。
取締役非会設置会社の場合は、計算書類や事業報告などの書類を作成するだけで、監査役による監査や取締役会による承認は必要ありません。
また、計算書類などは、定時株主総会の開催日の1週間前から5年間、本店に備え置く必要があります。
次に定時株主総会の招集手続きについてですが、定時株主総会の開催期日と開催場所、定時株主総会の開催目的などについて決定しなければいけません。
これらは、取締役会設置会社では取締役会決議で、取締役非設置会社では取締役の決定で、それぞれ決定されることになります。
召集の通知は、公開会社では株主総会開催日の2週間前までに、非公開会社では株主総会開催日の1週間前までに、定時株主総会開催の通知を株主に対して発送する必要があります。
ただし、取締役会非設置会社では、1週間よりも短い期間を定款により設定することもできます。
取締役設置会社の場合は、召集通知を書面で送付する必要があり、また監査役の監査及び取締役会の承認をうけた計算書類なども召集通知を送付するタイミングで株主に提供しなければいけません。
なお、取締役会非設置会社の場合は書面による召集通知の送付を行う義務はないので、任意の方法で通知をすることが可能です。
定時株主総会の開催準備手続きと必要書類について、以下の通りまとめます。
手続き | 主な書類 | 備考 |
---|---|---|
事業年度の最終日
(基準日) |
・通常は定款に事業年度を規定。
・また、定款で基準日における株主を定時株主総会において権利行使できる株主(基準日株主)と定めていることが一般的。 |
|
決算報告書・事業報告書の作成 | ・決算報告書
・事業報告書 |
|
取締役会 (設置会社の場合) |
・取締役会議事録
主な議案は、決算報告書の承認、取締役候補者の決定、定時株主総会の招集 |
・決算報告書について承認。
・また、期末配当や定款変更 なども実施する場合には、株主総会で決議内容を決定するために議案追加が必要。 ただし、取締役会を設置していない会社は株主総会で議決されることになります。 |
定時株主総会の招集通知を株主へ発送 | 株主総会招集通知
委任状 |
一般的には定時株主総会開催日1週間前までに。 |
4.定時株主総会の決議方法
定時株主総会の決議には以下の方法があります。
(1)普通決議
特別決議や特殊決議による、とされている事項以外の決議事項については、「普通決議」で決議されることになります。
例えば、計算書類等の承認は普通決議事項です。
原則として、普通決議は、議決権を有する株主の過半数が出席する株主総会で、出席株主の有する議決権の過半数で決定される決議方法です。
(2)特別決議
定款の変更、会社組織の改編、新株や新株予約権の発行、減資、などは「特別決議」で決議される事項です。
特別決議は、原則として、議決権を有する株主の過半数が出席する株主総会で、出席株主の有する議決権の2/3で決定される決議方法です。
(3)特殊決議
「特殊決議」によって決議されるのは、全ての株式について譲渡制限を付す定款変更を行う場合などです。
特殊決議は、原則として、議決権を有する株主の半分以上が出席する株主総会で、出席株主の有する議決権の2/3で決定される決議方法です。
5.定時株主総会開催後の事務
定時株主総会を開催した後には、議事録の作成や決算公告を実施しなければいけません。
(1) 議事録の作成
株主総会の議事内容については、議事録を作成する必要があります。
会社法施行規則では議事録に記載する事項が定められています。
具体的には、株主総会の開催日時・場所、出席した取締役の氏名、議長の氏名、議事録を作成した取締役の氏名、議事の内容・結果、などを議事録に記載します。
(2)決算公告
中小企業の場合には必要ありませんが、中小企業以外の株式会社では、定時株主総会が終わったら、賃借対照表を地帯なく公告する必要があります。
定款で公告方法は定められていますので、その方法に沿って決算公告を実施します。
定時株主総会まとめ
定時株主総会は会社を運営していくうえで年に一度の重要なイベントです。
株主に対して当該事業年度の実績を報告し、役員の改選や重要な財務施策の実行などについて承認を得る場でもあります。
会社の大小にかかわらず企業経営をしている人にとっては、1年の振り返りと今後の事業方針について向き合うことになる大切な機会です。
準備を怠らずに株主総会に臨むようにしましょう。