役員賞与でも損金算入できる?具体的な手法と考え方まとめ

役員賞与の損金算入の考え方をイメージする画像 財務改善

会社の役員になると役員賞与が支給されて平社員の頃に比べると羽振りが良くなる、なんて考えていませんか?

確かにそういった面があることは否定しませんが、役員賞与は必ず支給されるものではありません。

役員になれば会社の業績に責任を持たなければなりませんので、役員賞与が支給されるのは経営の結果次第ということになります。

また、経営者にとっては、役員賞与の支給には利益処分的な意味合いが強いと考えることもあるでしょう。

役員賞与とはどのようなものか、どういった場合に損金に算入できるのか、などについて説明します。

 

1.役員賞与とは

役員賞与とは、文字通り、会社の役員(取締役や監査役など)に支給される賞与のことで、臨時に支払われる給与で退職金以外のものを言います。

役員賞与は金銭であることが一般的ですが、以下のような現物給付は役員賞与とすることができます。

役員賞与となる現物給付

役員報酬となる部分

① 役員に贈与された製品・商品など

製品・商品の時価相当額

② 役員に安く譲渡された製品・商品など

譲渡金額と時価相当額との差額

③ 住宅や土地の無償貸与

賃料相当額

④ 住宅や土地を安く貸与

賃料相当額と実際の賃料との差額

⑤ 金銭の無償貸与

利息相当額

⑥ 金銭を安く貸与

金利相当額と実際の支払利息との差額

また、従業員の賞与と役員の賞与には大きな違いがあります。

それは、会社の業績が良い(年度末に予想以上の利益が出た!)ので、突発的に従業員にボーナスを払おう、となっても問題はありませんが、これを役員報酬として支給しようとすると問題が発生してしまいます。

従業員賞与の場合であれば、従業員に支払った金額は、過度に高額でない限りは、全額の損金算入が認められますが、役員賞与の場合は損金算入することができません。

役員賞与を損金算入できなくても支給する、ということであれば支給自体は可能ですが、株主や債権者(銀行など)に対して、法人税を安くすることができない役員賞与の支給に合理的な説明をすることが必要になる可能性があります。

 

2. 役員賞与の損金算入

それでは役員賞与を損金算入するためにはどうすればよいのでしょうか。

まずは税務署に対して事前に届出を出しておくことです。

この制度を「事前確定届出給与」と言います。

株式会社の場合は株主総会、合同会社では社員総会から、それぞれ1ヶ月を経過する日までが届出の提出期限となっています。

例えば、会社(中小企業)が3月決算であれば、株主総会は5月末までに開催(監査が不要な中小企業の場合は、法人税法上の定めにより、株主総会は決算終了後2ヶ月以内に開催する必要があります)をして、税務署への届出は6月末までに行う、という流れになります。

また、「定期同額給与」とされている役員報酬を増額したり減額したりする場合も、このタイミングでの株主総会で決定されることになりますので、役員賞与の金額も同様に決定することになるでしょう。

もうひとつのポイントが、「使用人兼務役員に対する使用人部分の支払い」に対する取り扱いです。

会社の役員であっても、その人が使用人兼役員である場合、使用人部分に対しての賞与は損金として求められるケースがあります。

国税庁のホームページには以下のような記載があります。

使用人兼務役員とは(国税庁HPより)

・法人が使用人兼務役員に対して供与した経済的な利益の額が、他の使用人に対して供与される程度のものである場合には、その経済的な利益の額は使用人としての職務に係るものとされ、損金の額に算入されます。

・使用人兼務役員とは、役員のうち部長、課長、その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事する者をいいます

・次のような役員は、使用人兼務役員となりません

  1. 代表取締役
  2. 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
  3. 合同会社等の業務執行社員
  4. 取締役、会計参与、監査役、監事
  5. 同族会社の役員など

ここでよく問題になるのは「職制上の地位を有する」という部分です。

名目上は役員であっても実態は役員とは言えないような場合は、税務署は役員として認めないでしょう。

あくまで「実態に即して」税務署は判断をするからです。

逆に、たとえ「副社長」などの肩書きが付いていなくても、実態が「副社長」と同等であれば役員とみなされてしまうでしょう。

 

3.役員報酬と役員賞与

会社法や会計では、役員報酬と役員賞与は同じ扱いをしており、両方とも「職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益」として、費用処理されています。

しかし税務上の取り扱いは異なっています。

役員賞与に関しては、前述の通り、法人税法上は原則として損金算入できません(事前届出が必要)。

しかし、役員報酬に関しては、過度に高額でない限りは損金算入が可能です(従業員賞与と同様)。

これは、役員報酬は役員としての通常の業務執行に対する対価(費用)として支払われるという考え方に基づくものです。

法改正がなされる前は、役員報酬か役員賞与かを区別するために、定期的な報酬か(役員報酬)、臨時的な報酬か(役員賞与)、といった点で分けていましたが、現在では役員賞与の損金算入については届出制度によりクリアされています。

法令などに沿って、役員報酬と役員賞与について、もう少し詳しく見ていきましょう。

まず、役員報酬と役員賞与の区分についての法人税基本通達(法基通)です。

  1. あらかじめ定められた支給基準によって、毎日、毎週、毎月のように、月以下の期間を単位として規則的に反復または継続して支給される定期の給与は報酬となります。ただし、これらの給与でも通常の昇給等以外に、特定の月だけ増額支給された場合は、その給与のうち各月に支給される額を超える部分は賞与として取り扱われます(法基通9-2-13)。
  2. ほかに定期の給与を受けていない非常勤役員に対し、継続して毎年1回又は2回、一定の時期に定額を支給する規定に基づいて支給されるものは報酬となります。ただし、これが利益に一定の割合を掛けて算定されることになっている場合は賞与となります(法基通9-2-14)。
  3. 固定給のほかに支給される歩合給、能率給などで、使用人に対する支給基準と同じ基準によって支給されるものは報酬になります(法基通9-2-15)。
  4. 定時の株主総会、社員総会などで、役員報酬の支給限度額の増額改訂が決議され、その決議された日の属する事業年度開始の日以後に増額が行われることになっている場合は、その増額分として一括して支給されるものは報酬として取り扱われます(法基通9-2-9の2)。

賞与と社会保険料に関しては、「賞与と社会保険料の計算について社長と経理が知っておくべきこと」の記事でも詳細に解説しています。

 

4.業績連動型の役員報酬について

比率をイメージさせる画像

経営業務に対する役員のモチベーションを高く維持するために、役員賞与(報酬の場合もあります)を会社の業績に連動させて決めている会社があります。

このような場合の役員報酬は税務上どのような取り扱いになるのでしょうか。

従業員に対する報酬や賞与は業績連動型であっても、過度に高額でない限りは、全額損金算入することが可能です。

しかし、現在の税制では、業績連動型の役員賞与を全額損金算入することは難しいと言わざるをえません。

業績が確定していないので事前に税務署に届出を出すのが難しいことが大きな理由の一つです。

この場合、事前に予想した役員賞与の金額を届け出ておいて、超過した金額部分については損金算入をしない、という実務が考えられますが、中小企業にとっては実務的な負担が増すことが考えられるので、業績連動型の役員賞与導入が増えてくれば、何らかの方対応がなされると期待しています。

なお、同族会社でない会社が利益連動給与を導入することは可能です。

しかし、その事業年度の利益に関する指標(有価証券報告書に記載が必要)【有価証券報告書は大企業が作りますが中小企業は作りません】を基準に決定されるため、同族会社が多く有価証券報告書の作成義務がない中小企業では、導入が難しいと考えられます。

 

5.消費税の取り扱い

役員報酬も役員賞与も、消費税上は不課税とされているので、課税仕入れにはあたりません。

 

役員賞与まとめ

役員賞与に関しては損金算入の要件が厳しく定められています。

これは、役員がお手盛りで自分たちのボーナスを勝手に決められないようにする仕組みのひとつです。

会社は株主や社員のものであり、株主総会や社員総会の同意を得て、会社財産(会社利益)の処分をするべきである、という原則に基づいています。

ただし、賞与は会社の経営結果を反映させるには、わかりやすい指標でもあります。

役員のやる気を引き出して、経営責任を自覚させるためには、役員賞与を上手に活用することが必要でしょう。 

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監修
株式会社レクリエ / 公認会計士・税理士
沢田慎次郎

お金の流れを変えて、未来を創造する専門家。決算書や申告書から企業のお金に関する問題を洗い出し、財務改善・利益改善に活かすことを得意とする。
様々な規模・業種のクラアントをサポートしてきた経験と豊富な知識を活かし、調達再編スキームの構築や融資交渉サポートなども手掛ける。

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