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「モノ消費」から「コト消費」への変化、その背景と将来予測

「モノ消費」から「コト消費」への変化 業務改善

時代は「モノ消費」から「コト消費」へ、というキャッチフレーズを耳にするようになっていますが、「モノ消費」や「コト消費」とはどのような消費スタイルのことを指しているのでしょうか。

「モノ消費」と「コト消費」の定義や概要、両者の相違点やメリットとデメリット、などについて解説して、加えて「トキ消費」や「イミ消費」についても説明します。また、新しい消費スタイルに対して中小企業はどのように対応する必要があるのか、考察します。

1.「モノ消費」「コト消費」とは

モノ消費とは従来の「商品(モノ)」を購入したり所有したりして、その価値を消費することを意味しており、「モノ」を持っていることに価値を見出すような消費スタイルのことをさしています。

一方、「コト消費」とは所有することでは得ることができない体験や経験といった、サービスや商品を通じて得られるものに価値を感じるような消費の傾向を意味しています。2006年頃から「コト消費」という言葉が使われ始めており、既に消費傾向の中心は「モノ消費」から「コト消費」へと変化してきているものと考えられます。

(1)「コト消費」が拡大した背景

既に日本では世間に多くの「モノ」が溢れており、モノを所有することの希少価値が乏しくなっており、いつでも誰でもモノを入手することができるようになっていることから、モノの所有以外の部分に価値を見出すようになってきたことが「コト消費」拡大の背景だと考えられます。

またインバウンドの顧客は、もちろんお土産を購入する、といった「モノ消費」もしますが、日本食を食べたり、名所・景勝地を訪問したりすることに高い価値を感じており、コト消費の傾向が強かったことも「コト消費」を拡大させる理由になったと思われます。

現在では新型コロナ感染症拡大の影響で海外からの旅行客は大きく減少していますが、インバウンド客が根付かせたコト消費のスタイルが全くなくなってしまうということは考えにくいし、スムーズに旅行ができるようになったら、迎える側もコト消費を意識したサービス提供を実施するでしょう。

そして、インターネットの普及もコト消費の背中を押していると考えられます。お取り寄せや通信販売など、現地に行かなくてもその土地の名物や食べ物などを購入することができるようになっていることから、実際にその場に行かなければ体験できないようなサービスの価値が高まっていると考えられます。

(2)コト消費のタイプ

コト消費、と一言で言いますが、その内容は主に以下の7つのタイプに分けられます。

コト消費のタイプ 概要
純粋体験タイプ 純粋体験タイプのコト消費とは、ホテルや旅館といった施設における宿泊やスキーやカヌー・ラフティングといったアクティビティ体験などの企業・自治体などが提供しているサービスが利用者の体験になっているような消費を言います。それらの体験を通じて、その場でしか得ることができないモノ(例えば、手作り体験を通じて作成した陶器など)を販売する、といった「モノ消費」へと繋げることも可能です。

 

イベントタイプ イベントタイプのコト消費とは、ショッピングモールやデパートといった商業施設でイベントを開催することを指します。
イベントそのもので売上を伸ばすことに目的があるのではなくて、イベントで集客をして、その後にモノ消費へと繋げることが本来の目的です。
アトラクション施設タイプ アトラクション施設タイプのコト消費とは、遊園地や映画館、美術館などのアトラクション施設をショッピングモールなどの商業施設に一緒に設けることで集客を図ることを意味しています。
時間滞在タイプ 時間滞在タイプのコト消費とは、快適な居心地を感じられる場所・空間を確保したショッピングモールなどの商業施設において、長い時間そこに居続けてもらうことを目的にしている消費のことです。
長い時間そこに滞在してもらうことが本来の目的ではなく、そこに居る中でモノ消費へと繋がるようなシステム(仕組み)を構築することが極めて大切です。
具体的には、コーヒーショップに併設した本屋で、じっくりと本を選んで購入することができる、といったケースが考えられます。
コミュニティタイプ コミュニティタイプのコト消費とは、商業施設の内部にコミュニティを作って、モノ消費へ繋げるような消費のことを指します。
具体的には、サーフ・ショップにサーファーが集まることでコミュニティを形作ってお互いに情報を共有する、といったケースを挙げることができます。
ライフスタイルタイプ ライフスタイルタイプのコト消費とは、商業施設などが消費者のライフスタイルにマッチした商品を提供して、その商業施設(お店)のファンになってもらうような消費のことを言います。
例えばインテリアを扱う雑貨屋などが、多種多様化している消費者ライフスタイルに沿った様々な商品を組み合わせることで、消費者の購買意欲に訴えるようなケースを挙げることができます。
買い物ワクワクタイプ 買い物ワクワクタイプのコト消費とは、ショップ内の商品レイアウトやお店全体の雰囲気、販売している商品の魅力、などををダイレクトに伝える演出をして、買い物(ショッピング)そのもの楽しくてワクワクするような仕組みを作り上げるような消費のことを言います。

モノ消費との直接的な繋がが強いコト消費であると言えます。

 

以上のようにコト消費とは場所や目的が異なれば消費者に提供できる体験も変わってくるのですが、その体験に価値を感じれば消費者はモノ消費へと向かう可能性があり、商業施設や店舗にとってもコト消費とモノ消費を繋げる効果があるものと考えられます。

(3)コト消費の課題

消費の傾向はモノ消費からコト消費に向かっていると前述しましたが、日本においては実際にコト消費の水準が高いとはいえない、という現実が言われています。前述したインバウンドのケースを考えると如実にわかるのですが、欧米を中心としたインバウンドの旅行客は旅行費用の中で娯楽消費額が占める割合が高いと言われています。

しかし、日本の旅行客は娯楽費にかける金額が少なくて、例えば、旅行費用に占める娯楽費用の割合が高いオーストラリアに比べると、日本人の場合は約1/4しかないという結果が観光庁から発表されています。

わが国においてコト消費の金額を増やすことは、日本政府(観光庁)が目標としている2020年の旅行消費額8兆円の達成には必要不可欠(新型コロナの影響で目標達成は非常に困難な状況ではありますが)であり、いかにしてコト消費を増やすのか、は極めて重要な課題であると言えます

またコト消費に関するサービス提供側としても、モノ消費に比べると売上を作るという点において経験もあまりないうえに間接的なモノ消費への影響というものを図りかねてしまう、という難しさもあります。

前述したように、モノ消費につなげるコト消費、という観点は非常に大切ではありますが、この言葉自体が結局はモノ消費に重きを置いている、と捉えられる言葉であり、コト消費の本質的な重要性を理解することからコト消費の本格的かつ安定的な拡大が根付くようになるのかもしれません。

 

2.中小企業と「コト消費」

これまで説明してきたようにコト消費を根付かせたり拡大したりするにはそれなりの仕掛けが必要になることから、大手企業でないとコト消費に関与することが難しいのではないかと思ってしまうかもしれません。

確かに大企業は様々な売上に繋がるようなきっかけ作りの経験は豊富ですし、多額の費用をかけて仕組みを構築することも得意かもしれません。しかし、コト消費をモノ消費に繋げる工夫は機動的かつ柔軟に動くことができる中小企業にとって得意な分野かもしれません。
本稿では中小企業とコト消費の関係について事例も交えて説明します。

(1)地方経済におけるコト消費と中小企業のあり方

有名な観光地や温泉地であればさほど宣伝をしなくても多くの旅行客が訪れてくれるので、地域経済は活性化しているのかもしれませんが、多くの地方においては集客に苦しんでおり、そこで事業を営んでいる中小企業も悩みが深いのではないでしょうか。

神奈川県にある湯河原町も湯治客は来てくれるものの、町の中心街にはなかなか訪問してくれず、温泉街に来てくれた客を町の中心街に呼び込むことが喫緊の課題になっていました。また、町全体の問題として後継者不足という課題もあったのです。

そこで湯河原町として、湯河原町の名産や手作り作品の工芸品などを販売する手作り市「ぶらん市(ぶらんち)」を町の中心地で開催することにしたのです。ただ手作り市を開催するだけではなくて、湯河原町の歴史や文化に触れたい、と考える観光客のニーズを汲み取って湯河原町の魅力を伝えることができるような出店者を集めている点に最大の特徴があります。

湯河原町の人口は約25,000人ですが、現在ではこのぶらん市に30店以上の店舗が出店しており、人口規模を考えると多くの出店により活気が生まれていると言えます。このぶらん市が有名になることで、温泉場と町の中心地との間で観光客が回遊するという現象も発生しています。

このような状況を受けて湯河原町としても、歩道の整備や街路灯の設置などを進めることとなり、官民一体となって地域資源を活用した特色ある商店街づくりを行っています。さらに少子高齢化により後継者不足に悩んでいた商店街にも、活気の戻ってきた町に呼応するように若者が町に戻るケースも増えており、体験・経験をサービスとして提供するコト消費の拡大が地方再生に大きく貢献している事例と言えるでしょう。

このように地方再生におけるコト消費の拡大を担うのは地域に根付いている中小企業のケースが多いと考えられます。資本力に乏しい中小企業であっても、既存の観光資源などをどうやって活用してコト消費を拡大させるのか、ということを知恵を絞って考え抜くことが重要なのではないでしょうか。

(2)知られていない旅行の魅力を伝える中小企業とコト消費

大手旅行代理店ではパッケージされた旅行の内容をサイトに掲載しているようなケースが多いと考えられますが、中小企業であるホテル・旅館などではそのようなサイトに掲載されていないその場所ならではの魅力を詳しく知っています。

従来は宿泊客に直接おススメのポイントや場所などを教えていましたが、当地を訪れてくれる、あるいは興味を持ってくれる海外からのお客様(インバウンド)にそのような情報を事前に知らせることは、言語などの壁もあり、簡単ではありませんでした。

もちろん大手旅行代理店に依頼してそのようなサイトを作成してもらうことは可能ですが、それなりの費用が必要になってしまいます。そこで信金中央金庫(信用金庫のセントラルバンクとして信用金庫の経営支援を実施)はインバウンド向けに日本文化を体験できる予約サイトである「Attractive Japan」を運営している地域ブランディング研究所と連携して、体験可能なメニューを世界向けの大手サイトに掲載、全国にインバウンド観光客を呼び込むようなプロジェクトを実施しています。

上記のプロジェクトでは、世界中で利用されているエクスペディア、トリップアドバイザー、ビアター、といった旅行関連の情報サイトに掲載して、団体客よりは個人旅行客向けに日本体験を中心としたプランを販売しています。

信用金庫は各地の中小企業との関係が深いこともあり、このプロジェクトでは地方の各取引先から、着物の着付け体験、お神輿を担げる体験、和食を作る体験、民謡を教えてもらったり鑑賞できたりする体験、といった地域特性や文化に基づくインバウンド観光客にとって魅力ある催しを募集しています。

ちなみに、上記サイトへの掲載は全て日本語での対応が可能で、地域ブランディング研究所にメニュー設定などのコンサルティングを依頼することも可能です。サイトへの掲載期間は1年間で料金は3万円です。

このように様々な体験をすることができることをインバウンド観光客に広く周知することができれば、中小企業を通じたコト消費が伸びることになると同時に地方活性化にも大いに役立つことになるでしょう。

(3) コト消費の活用による中小企業ビジネス

一昔前は果物狩りは家族で出かけて楽しむイベントでしたが、最近ではほとんどの果物はスーパーなどで入手することが可能だし、天候に左右されることから人気のあるイベントと言うことはできないようで、各地の果物狩りを営んでいる果樹園業者の人々は経営の維持に苦しんでいるものと思われます。

しかし、海外には果物狩りのようなイベントはあまり存在しておらず、興味を持つインバウンド観光客は少なくないものと考えられます。実際に、長野県飯山市で外国人向けの観光農園を営んでいる日本ファームでは、リンゴ狩りとサイクリングを組み合わせた手法で多くの観光客の集客に成功しています。

ただし、単にリンゴ狩りとサイクリングの機会を提供しているわけではなく様々な工夫をしていることを忘れてはいけません。例えば、英語で接客ができるガイドを設置してリンゴの収穫方法や食べ方などを丁寧に説明していること、無線Wifiやバリアフリー・おむつ交換場所などが完備された水洗トイレを設置していること、など、手厚い顧客サービスを実施しています。

長野県には善光寺などの有名観光地も多いうえに蕎麦やおやきなどの地方色豊かな食事も豊富であり、インバウンド観光客にとっては期待値の高い場所であると言えます。そこにこのようなリンゴ狩りといった体験ができるプランが用意されていれば、特にコト消費を重視しているようなインバウンド観光客にとっては非常に魅力的な場所となっているでしょう。

ここでの重要なポイントは、リンゴ狩りという観光資源を十分に活用するために観光客にとって快適な過ごし方ができるように、言語や生活スタイルなどに配慮したソフト面・ハード面両方に配慮した受け入れ態勢を整備しておくことが大切である、ということです。

このようにコト消費を拡大するには、既存のリソース(資源)をどのように活用するのか、という点に知恵を絞ることと、利用者にとっての満足度とはどういった部分なのか、といった、お客様商売にとって当たり前のことを当たり前にしっかりと行う、ということが大切だということです。

これまで説明してきたようにコト消費の拡大には中小企業や地方企業の積極的な関与が必要不可欠です。これからの消費スタイルを実質的に牽引するのは中小企業だと思われます。

 

3.「トキ消費」から「トキ消費」、そして「イミ消費」へ

90年代の後半からモノ消費からコト消費へと消費のトレンドは移ってきましたが、2010年代頃からはコト消費に代わる新たな傾向として「トキ消費」というものが登場しました。この「トキ消費」は博報堂生活総合研究所によって提唱された概念・言葉で、特定の時間や場所でのみ楽しむことができる消費スタイルのことを指しています。

トキ消費の特徴としては、(1)非再現性、(2)参加性、(3)貢献性、の3点が挙げられています。

<トキ消費の特徴>
(1) 非再現性
(2) 参加性
(3) 貢献性

(1) 非再現性

トキ消費には、時間・場所が特定、あるいは限定されているため、二度と同じ体験ができないという特徴があります。つまり、その機会を逃したら同じ感動は味わうことができなうという貴重性から消費者の消費行動を促進させるということになるのです。

(2) 参加性

受け身で参加すると単なる傍観者としてあまり楽しむことができないようなイベントであっても、積極的に参加することで楽しい思い出に残るような素晴らしい体験へと代えることができます。トキ消費においては能動的な参加によって主体的に消費する、という面が特徴になります。

(3) 貢献性

一般的には、何らかのイベントや体験が消費者に対して素晴らしい思い出を提供したりするという「貢献」については消費者が受け身側であることが通常だと思われますが、トキ消費の特徴は消費者が一緒にイベントに参加して盛り上がりに貢献する、という点があります。

つまり、イベントなどを盛り上げることに自分が一役買っていることを自覚することで、より鮮烈に思い出に残る体験をすることができる、ということがこれまでのモノ消費やコト消費にはない特徴があると言えるのです。

トキ消費の具体的な例としては、2017年に実施されたフレッシュネスバーガーの「スパムバーガー生き残りキャンペーン」が有名です。ハンバーガーを販売しているフレッシュネスバーガーでは、いつも売上ランキングの最下位であったスパムバーガーが2週間続けて売上ランキングのベスト8に入れば販売継続、8位以内にランクインしなければ販売終了、というキャンペーンを実施しました。

その結果、スパムバーガーは見事に2週連続で売上ランキングベスト8にランクインして販売継続となったのです。このキャンペーンでは、今しかスパムバーバーは食べられないかもしれない(非再現性)、自分がスパムバーガーを食べることで販売継続になるかもしれない(貢献性、参加性)、というトキ消費の特徴を捉えたマーケティング手法であったと絶賛されたのです。

他にもハロウィンもコト消費の代表と言えるのではないでしょうか。毎年10月末頃のハロウィンの時期になると人々が仮装して渋谷のセンター街などに集まって騒ぐ、というイベントは、その時期にしかできないこと(仮装)に自ら積極的に参加して(参加性)、他の参加者と一緒に渋谷の街を盛り上げる(貢献性)、という点においてコト消費の特徴を備えているということができるのではないでしょうか。

ただし、ハロウィン後に街を清掃したり他人に迷惑をかけたりしない、という意味でのハロウィンへの貢献性も備えたイベント参加が重要である点には触れておきたいと考えます。このようにトキ消費はその場・その時さえ楽しめばよい、という誤解により、他人への配慮が不足してしまう可能性がある点には十分に注意すべき消費行動であると言えます。

トキ消費とほぼ同じような時期に、特に被害日本大震災以後に言われるようになってきた新たな消費傾向のことを「イミ消費」と言います。イミ消費は飲食店で利用可能なクーポンを提供している企業に勤めている、ホットペッパーグルメ外食総研のエヴァンジェリストである竹田クニ氏が提唱した概念です。

次いで、「イミ消費」とは、商品やサービスの機能的な価値のみならず、それらの歴史的・文化的・社会的背景も踏まえて自分にとってこの消費行動にはどういった意味があるのか、どのような意義があるのか、を考えたうえで消費するスタイルのことを言います。

東日本大震災という未曽有の災害を経験したことで、多くの消費者はただ漫然と消費するのではなく、この消費行動にはどういった意味合いがあるのか、ということを日常的に考える機会が増えることになりました。

そのような環境下において、被災地の野菜や魚介類を率先して購入しようとか、有機栽培で育てた野菜を利用しているレストランで食事をしようとか、自分の消費行動が社会的な貢献に繋がり意味のある行動になっている、ということに満足感を感じる人が増えているものと考えられます。

その他にも、プラスチックごみを出さない容器を使用している食品を購入したり、割り箸を使用することを止めてマイ箸を持参するようにしたり、エコの観点からもイミ消費が実施されているような場合もあるのです。

イミ消費は「食」の世界だけのものではありません。例えば、ホテルや旅館などの宿泊業界において、提供しているアメニティ類を環境に優しいものへと交換したり、これまで使い捨てられていたスリッパなどの備品を持ち帰りが可能なものへと交換したり、ホテルや旅館で提供する地元のミネラルウォーターの売上を一部環境団体などに寄付したり、といったことがイミ消費として行われています。

現在では新型コロナ感染症の影響により、飲食業界も宿泊業界も非常に業績が厳しくなっており、我々利用者サイドも相当な我慢を強いられているのが現状です。このような中で意味のある消費行動をすることは極めて大切になっていると考えられます。

世の中の変化と消費行動の変遷には切っても切れない関係があるものと思われます。大量にモノを消費する時代を経て、体験というコトを重視する時代へと移り、そして希少性や貢献性といった消費の重要性に気付き、さらには意味のある消費をする時代へ、と消費というものに能動的に関わっていく時代に我々は生きれいるのかもしれません。

<随時決定が実施される3つの条件>

消費スタイル モノ消費 コト消費 トキ消費 イミ消費
時期 ~2000年代前半 2006年頃~ 2010年頃~ 2010年頃~
(東日本対震災以降に顕著に)
提唱者 提唱者は不明ですが、経産省においても使用されている言葉 博報堂
生活総合研究所
ホットペッパーグルメ外食総研エヴァンジェリスト竹田クニ氏
定義 商品やモノを所有することに価値を見出す消費行動のこと 「「コト消費」とは、製品を購入して使用したり、単品の機能的なサービスを享受するのみでなく、個別の事象が連なった総体である「一連の体験」を対象とした消費活動のことである。」
(出典:経済産業省 地域経済産業グループ/平成27年度 地域経済産業活性化対策調査 (地域の魅力的な空間と機能づくりに関する調査) 報告書
ある決まった時間や決まった場所でのみ楽しむことができる消費スタイルのこと 商品やサービスの機能的な価値のみならず、それらの歴史的・文化的・社会的背景も踏まえて自分にとってこの消費行動にはどういった意味があるのか、どのような意義があるのか、を考えたうえで消費するスタイルのこと
特徴 大量の、あるいは高価なモノを所有していることに満足感を感じることで、大量消費時代に相応しい消費スタイル 最終的にはモノ消費に繋がるきっかけになるケースもありますが、町おこしや地方再生の起爆剤になる場合もあり、「体験」をキーワードにした消費スタイルと言えます。 非再現性、参加性、貢献性、といった特徴を備えており、「個」の満足度を重視した消費スタイルです。 商品・サービスの機能的価値だけでなく、歴史的・文化的・社会的背景も含めて自分にとっての消費行動に意味を見出すようなスタイルのことです。
具体例
  1. 湯河原町の「ぶらん市」
  2. 長野県飯山市の日本ファーム
  1. フレッシュネスバーガーのスパムバーガーキャンペーン
  2. ハロウィーン
  1. 地産地消
  2. 被災地支援

上記のようにそれぞれの消費スタイルには別々の特徴がありますが、ひとつの軸があるように感じられます。それは、消費者はその消費行動によって何らかの成果=満足感を得ようと考えていることではないでしょうか。

この「成果=満足感」が、従来はモノを所有することによる満足感だったものから、「体験」による満足感へ(コト消費)、社会的な参加による貢献の満足感(トキ消費)や意味のある消費をすることの満足感へと移り変わってきている、ということではないでしょうか。

今後のアフター/ウィズコロナにおけるビジネスにおいては、顧客満足度をどのような観点で充足することができるのか、といった視点が極めて重要になると思われます。特に、前述した「イミ消費」の観点を忘れることなく、コロナ禍の中で知恵を絞った顧客視点での新たなビジネス展開が求められることになるでしょう。

<まとめ>

消費のスタイルは時代の趨勢とともに移り変わってきましたが、そのスタイルは従来の大量消費の時代からは明らかに大きく変化していると言えます。みんなが同じものを手に入れて喜んでいたような時代は遠くなり、今ではどういう意味を持ってこの消費行動を行うのか、という個の満足度を中心とした消費スタイルになっているものと考えられます。

ビジネスの世界においても、多品種大量生産から多品種少量生産へ、という希少価値を求める生産方法に変化してきていると考えられます。つまり、自分にしかわからない大切な価値を提供してくれる財・サービスにのみ、これからの消費者は満足感を得られるようになるのではないでしょうか。

このことは単に消費スタイルが変化した、ということ以上に、ビジネス、あるいはマーケティングにおけるターゲット層の絞り込みという観点においても大きなパラダイム・シフトを発生させることになるのではないかと考えられます。

今後消費者のトレンドやスタイルはどのように変化していくのか、いち早くどの点を見極めてビジネスの世界に具体的な方法を落とし込むことが重要な鍵になると思われます。

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