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未払消費税の定義や会計処理について説明します

未払い消費税の会計処理をイメージする画像 起業家の基礎知識

未払消費税とは、企業が納付することになる、確定した消費税額(国税分と地方税分)を管理するための勘定科目です。未払消費税の定義や仕訳処理について詳しく解説します。

 

1.未払消費税とは

原則として、税抜方式を適用している場合には、事業年度の末日において未納付の消費税等(未払消費税)については未払金に計上します。ただし、その金額の重要性が高いと考えられるような場合には「未払消費税等」として別に表示します。

期末においては、当期中の仮受消費税等と仮払消費税等を相殺して、その差額を「未払消費税等」、または「未収消費税等」に振り替えます。しかし、消費税等の端数処理の関係などの影響により、「未払消費税」、または「未収消費税等」の金額が、確定申告の際に計算した納付金額、または還付金額と同一にならない(一致しない)ケースが生じます。このような場合には、その差額を「雑収入」、または「雑損失」として処理することになります。

未払消費税は、貸借対照表上では「流動負債」に表示されることになり、決算の際に今期の納税額として計上されます。税務上の取り扱いとしては、原則として、消費税は申告書を提出した日を含む事業年度が損金算入のタイミングになりますが、会社が未払経理をした場合には「未払金」計上が認められています。

未払消費税とは
・税抜方式を採用している場合に発生
・貸借対照表上で「流動負債」
・仮受消費税等と仮払消費税等の差額(未収消費税の場合あり)

 

2.消費税の中間納付および期末の処理

決算時においては、最初に消費税額を計算して納付すべき税額を「未払消費税等」として計上します。そして、消費税を納付後に「未払消費税等」勘定の支出として処理します。中間納付の際には、「租税公課」や「仮払金」として処理します。

(1)中間納付と申告書

前年の消費税金額に応じて、消費税の課税事業者は、事業年度の途中であっても中間申告及び納付を行わなければなりません。この中間申告の目的は、前年の年間の税額を参考にして一定の金額を計算し、予め納付すること、にあります。中間申告で納税した金額を「中間納付税額」と言います。

また、一方で、年に1回の確定申告においては年間の消費税額を計算します。ここで算出された年間の税額は「年税額」と言います。年税額から既に納税した中間納付税額を差し引くと、消費税の確定申告書を提出したことによる納税額が確定します。確定申告書を作成・提出することで確定した税額のことを「確定税額」と呼んでいます。

確定申告書において確定税額を正確に計算するためにも、事業年度中で納付した中間納付税額を正確に計算して、記帳しておくことが必要です。

(2)税抜処理の場合

①中間消費税を支払った場合の仕訳

中間消費税を支払った場合は、「仮払金」、または「仮払消費税等」で仕訳を行います。

「中間消費税120,000円を現金で支払った場合」

借方 貸方 摘要
勘定科目 金額 勘定科目 金額
仮払金 120,000 現金 1,200,000 中間消費税の支払い

②決算時の清算の仕訳

決算時における「仮払消費税等」と「仮受消費税等」との清算の仕訳を行います。

中間消費税の場合も同様にこの仕訳で処理を行います。

「決算時の仮払消費税等の残高が200,000円、仮受消費税等の残高が400,000円、確定納付額が79,800円の場合」

借方 貸方 摘要
勘定科目 金額 勘定科目 金額
仮受消費税等 400,000 仮払消費税

仮払金

未払消費税等

雑収入

200,000

120,000

79,800

200

消費税清算仕訳

中間消費税

確定納付額

消費税清算仕訳差額

なお、消費税清算の差額は、「雑収入」、または「雑損失」で会計処理をします。

③翌期に確定納付額を支払った場合の仕訳

「翌期に前年度で未払計上済みの確定納付額79,800円を現金で支払った場合」

借方 貸方 摘要
勘定科目 金額 勘定科目 金額
未払消費税等 79,800 現金 79,800 確定納付額の支払い

 

(3)税込処理の場合

①中間消費税を支払った場合の仕訳

中間消費税を支払った場合には、「租税公課」を用いて仕訳を行います。

「中間消費税120,000円を現金で支払った場合」

借方 貸方 摘要
勘定科目 金額 勘定科目 金額
租税公課 120,000 現金 1,200,000 中間消費税の支払い

②決算時の清算の仕訳

原則として、仕訳は不要です。税込経理の場合は、原則として、申告書が提出された日の属する事業年度に経費に計上するので、納税前の未払分は経費に計上されないものとなります。ただし、例外として、決算において未払処理を行った場合は、その処理を行った事業年度において経費に計上することが可能です。例外として、決算で未払処理をする場合には、「未払消費税等」で仕訳を行います。

「確定納付額を未払計上する(例外としての会計処理方法)」

借方 貸方 摘要
勘定科目 金額 勘定科目 金額
租税公課 79,800 未払消費税等 79,800 確定納付額の未払処理

③翌期に確定納付額を支払った場合の仕訳

原則として、翌期に確定納付額を支払った場合は、「租税公課」を用いて仕訳を行います。

「翌期に確定納付額79,800円を現金で支払った場合」

借方 貸方 摘要
勘定科目 金額 勘定科目 金額
未払消費税等 79,800 現金 79,800 確定納付額の支払い

なお、決算時の清算仕訳処理において、例外の方法を採用した場合には、借方の勘定科目は「未払消費税等」を使います。

 

3.未払消費税を把握することの重要性

消費税は、売上に加えて、企業に入金されます。既に十分ご存知でしょうが、これは一時的に預かっているお金に過ぎません。後日、仕入れなどで支払った消費税を差し引いて、その残った金額を国に納付する必要があります。

上記の仕組みは経営者であれば十分に理解していることだとは思いますが、お金に色が着いているわけではないので、ついつい他の通常の会社のお金と一緒に管理してしまうこともあるでしょう。消費税を納付するのは、基本的には本決算で年に1回、中間納付で1回、あるいは中間納付を3回払う場合もあります。また、年間6,000万円以上の消費税を納付するような会社であれば、中間納税を毎月支払うことになります。

多くの会社では年2回、あるいは年4回の納付になっていると思われますが、上記のようにまとめて消費税を支払うため、預かっているお金としての位置付けになっているとはいえ、実際に支払う際には重税感を感じます。

しかし、消費税を払わずに済むことは、原則としてありえませんし、企業としてはしっかりと対策をする必要があります。

最初に、会社として今払わなければならない消費税はいくらなのか、ということを毎月正確に把握するが重要です。会計的には、仮受消費税と仮払消費税を相殺することにより、その差額を現在納付すべき消費税として認識することができます。

ただし、非課税売上が多い場合には、単純な差額計算で求めることはできないので注意が必要です。また、正しい会計処理が行われていない場合にも、単純に差額とはいえないことがあります。したがって、経理部門などで相談したうえで、毎月末に払うべき消費税額を正しく計算できるように、会計処理を正確に行えるような体制整備が重要といえるでしょう。

可能であれば、毎月、仮受・仮払の相殺処理を実施することにより、しっかりと「未払消費税」を試算表に表示することをおすすめします。もし、この方法を実施することが難しい場合には、次善の策として、毎月、未払消費税を別途計算するようにしてはいかがでしょうか。

 

<まとめ>

未払消費税とは、基本的には、決算仕訳においてのみ用いられる勘定科目として考えてもよいでしょう。納税をする際の会社の資金繰りにも影響を与える勘定科目ですので、前述したように、しっかりと把握・管理をすることが重要です。

仮受消費税と仮払消費税については下記の記事でも詳しく説明しています。