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倒産続出!? 経営破綻の種類とその後の手続きについて解説します

経営破綻の種類とその後の手続きをイメージする画像 起業家の基礎知識

新型コロナ感染症の拡大防止対策として、特措法(新型インフルエンザ等対策特別措置法)に基づく緊急事態宣言が発令(202047日)されて全国に拡大(2020416日)、そして各地方自治体から外出や開店などの自粛要請が出されたことにより、日本経済には深刻なダメージが生じています。

2020525日に緊急事態宣言は終了が宣言されましたが、ホテル・旅館や飲食店にすぐに客足が戻るわけもなく、多くの企業が厳しい経営環境に置かれたままと言えます。新型コロナ感染症対策として、公的な助成金や補助金などの支援策が実施されていますが、残念ながら多くの企業の経営が破綻しています。

本稿では、経営破綻の種類にはどのようなものがあるのか類型別に特徴を説明して、その後にはどのような手続きが必要になるのかを解説します。また、経営破綻に陥らないようにするための対策についても述べます。

1.経営破綻とは

経営破綻とは、文字通り経営が破綻してしまうことで、経済の主体である企業(個人の場合も含まれますが経営破綻という言葉は主に法人に対して使用されています)が弁済期にある債務を返済することが不可能になり、経済主体としての活動をすることができなくなってしまうことを言います。正確に言うと経営破綻した企業でも復活でき可能性が全くないわけではありませんが、一般的なイメージは前述の通りです。

経営破綻に類似した言葉に破産や倒産というものがあります。倒産は企業に対して使用される用語なので、企業破綻とほぼ同じ意味だと言えます。また「事実上の倒産」という使われ方をする場合があります。これは、不渡り手形を2回以上出してしまった企業のことで銀行取引が停止されてしまった状態にあることを指しています。銀行取引ができない以上、倒産しているのと同じ状態になるのでそう言われているのです。

破産は法人だけでなく個人の場合にも使われる言葉です。破産とは債務の支払ができなくなった状態のことを言います。企業が倒産した場合に破産をして清算する方法もありますが、「民事再生」や「会社更生」といった方法で企業を再建させる方法もありますので、破産不撓=倒産、というわけではないのです。

(1)倒産の種類

それでは企業破綻の中でも一番耳にすることが多いと思われる「倒産」について説明します。倒産手続きは、大きく「法的整理」と「私的整理」の2種類に大別できます。法的整理とは、文字通り、法律に基づいて会社を整理する方法のことで、根拠法により、①破産、②特別清算、③民事再生、④会社更生、の4種類に分けることができます。

一方で、私的整理とは、法的な手続きを用いることなく、債権者との合意に基づいて、事業の再建を図ろうとするものです。もちろん会社清算を目的とした私的整理もありますが、最近では会社再建を目的とした私的整理が増加しています。

(いろいろな倒産の種類と根拠法・対象・目的)

倒産の種類

根拠法

対象

目的

破産

破産法

法人、個人

清算

②特別清算

会社法

法人(株式会社)

清算

③民事再生

民事再生法

法人、個人

再建

④会社更生

会社更生法

法人(株式会社)

再建

①破産

破産とは様々な理由により今後の会社の経営を継続することが不可能な状態になってしまった場合に、「破産法」という法律に基づいて処理する手続きのことを言います。破産の手続きは裁判所に申し立てることが必要であり、裁判所が破産管財人(弁護士から選出されます)を選任して、債権者に対して会社の財産を公平に配当することになります。破産すると会社は消滅します。

破産手続きを選択せざる得ない場合とは、以下のようなケースです。

・債権者の人々の中に、全く話し合いに応じることなく強制執行も辞さない、といった強硬なスタンスの状態の人がいるケース

・例えば、任意整理のような私的整理手続を妨害するような人(自分勝手な大口の債権者や俗に言う*「整理屋」など)が関与しているケース

・債権者から破産の申し立てが行われている場合

*整理屋

ここで言う整理屋とは、債務を整理して返済しやすくします、などと債務者に持ちかけて、高額の手数料を要求したり、あるいは返済金を詐取したりする悪徳商法をしている人や会社のことです。会社が倒産した(しそうな)場合によく登場しますが、背後に暴力団がいたりするので、十分に注意することが必要です。

破産のメリットとしては、債務が免除されますので、返済の必要がなくなり、取立などに怯えたりすることがなくなります。つまり債務者にとっては資金繰りに苦しむ日々から解放されることになりますので、精神的に落ち着いた日々に戻れるということは大きなメリットかもしれません。また、債務者にとっても、裁判所が決定した配当額に満足するかどうかは別にしても、法的な対応に基づいての処理なので、受け入れざるを得ないと考えられます。

一方で、中小企業においては経営者が個人保証を会社に差し入れているケースが多いと考えられるので、会社の破産はイコール経営者の破産となってしまうことが破産のデメリットだと言えます。経営者個人も破産してしまうと、今後会社を興して再起を図ることが難しくなってしまうことが考えられます。

金融機関からの融資は非常に困難になりますし、新たに取引先を見つけることも難しいでしょう。また、中小零細企業の場合は、自社の倒産が連鎖倒産を引き起こす可能性もあるので、その場合は多くの取引先に多大な迷惑をかけることにもなります。さらに破産した場合には従業員はぼ全員解雇となります。このように破産の場合には、取引先、従業員、など破産した企業に関係のある多くの人が多大なダメージを蒙ってしまうのです。

②特別清算

特別清算とは、会社を整理するという点では破産と同じですが、こちらは会社法に基づいて実施される手続きとなります。破産は株式会社のみならず、合同会社などの他の法人や個人も幅広く対象になっていますが、特別清算は株式会社のみを対象としています。

特別精算の手続きも破産の場合と同様に裁判所に申し立てることが必要です。そして、裁判所が「清算人を」選任して、清算人が選任した「特別清算人」が公平に債権者に対し資産(一般的には現金化します)を配当します。しかしながら、破産手続きの場合は、裁判所に選任された破産管財人(弁護士)とは異なり、特別清算人には会社の代表者などが就くこともできます。

また、特別清算の手続きを利用するには、債権者の2/3以上の同意が必要となっており、ここが破産の手続きとの大きな相違点になります。特別清算のメリットは、債務超過状態の株式会社を法的に正しく清算して債務を消滅させることが可能な点です。破産に比べると特別清算の方が、対外的には、イメージが若干良いと感じるかもしれません。

また、破産の手続きと比較すると早期に処理を完了することができます。平成29年度の司法統計によると、全体の70%以上が半年以内に手続きを完了しています。清算人を会社側で選べることもメリットと言えるでしょう。

一方で特別清算のデメリットとは、前述したように、債権者の2/3の同意が必要なこと、株式会社しか利用することができないこと、を挙げることができます。

③民事再生

民事再生手続きとは、民事再生法に基づいて倒産の手続きを進めることを言います。前述した破産や特別清算といった手続きとは異なり、企業・個人(債務者)が潰れずに存続することを前提としているので、財産の保有を一定限度までは認めたうえで、自らが負っている債務を圧縮して経済的に債務者の更生を図る、という裁判上の手続のことです。

民事再生では、裁判所が選任した監督委員が手続きをを監督しますが、実際に民事再生の手続きを遂行するのは債務者自身となります。経営陣を入れ替えることも不要です。民事再生の対象としては、原則として、相応の規模の法人や会社を想定しているのですが、個人のケースでは、「個人再生」といわれている特別な規定を適用することになります。

民事再生のメリットとしては、原則として3年間(最長で5年間)の分割払いで債務を返済すような計画を、裁判所関与の下で、立案することが可能になります。また、返済する元本を大幅に削減(カット)することが可能で、最高で負債総額の1/5まで圧縮することができます。また、元本を圧縮した後には将来の利息も削減可能となるので、毎月の支払負担が軽くなり、生活を建て直して再起を図るこ可能性が高まります。

また、会社破産や自己破産をした経営者個人は、免責の決定がなされるまでの間、一定の職業(弁護士、司法書士、税理士、公認会計士、不動産鑑定士、宅建主任者、保険外交員、警備員、など)の職業に就くことができません。しかし、民事再生の場合は将来の収入の一部を弁済に充当することとの交換条件として破産者となることを免れることが可能なので、前述したような職業上における資格制限はありません。

その他にも、民事再生の手続きを開始するという裁判所による開始決定が下されると、給与の差し押さえなどの強制執行手続が停止されることになったり、債権者全員合意が不要であったり、取り立て行為を停止させることができたりといったメリットも挙げることが可能です。

その反面、破産と比べると手続きが複雑で費用がかかってしまうというデメリットは考えられます。また、民事再生の手続きが認められた場合には、その後3年ほどは債務者に返済をする必要があるので、一定の安定した収入の確保が必要になります。さらに、民事再生の手続き要件を充足できない場合には、裁判所からの認可を得ることができないので、原則として、破産の手続きへと移行してしまうことになります。

 

④会社更生

会社更生の手続きとは会社更生法に基づく倒産手続きのことで、更生対象の債務者である法人の継続的な存続を前提としています。この場合の法人は株式会社に限定されます。そして、会社更生とは、企業に一定の財産の保有を認めたうえで、負っている債務を圧縮して経済的な更生を図る、という裁判手続のことを言います。

その点では、会社更生の手続きは前述した民事再生に似ているのですが、一般的には、会社更生は大規模な株式会社を想定しているので、これまでの経営陣を刷新することが要求されますし、会社更生の手続きは裁判所が選んだ更生管財人によって遂行されることになります。そう考えると、会社更生は民事再生の特別類型に属する手続きである、と言うことができます。

会社更生の手続き開始の決定があった場合には、破産や民事再生といった他の倒産手続きは中止となるというメリットがあります。したがって会社更生の手続きは他の全ての倒産手続きに優先するのです。また、会社更生の手続きにおいては*ゴーイング・コンサーンに基づく・バリュー評価によって企業価値を評価することになります。

*ゴーイング・コンサーンに基づく・バリュー評価

ゴーイング・コンサーンに基づく・バリュー評価とは、企業や不動産などの価値評価において、今後も企業・事業が継続する、ということを前提に評価すること、あるいはその評価価格のこと、を言います。

また、会社法の特則により、会社更生が裁判所から認可された場合には、合併、増減資、定款や取締役の変更、などを簡便な手続きで実施できるようになるというメリットもあります。

一方で会社更生法のデメリットとしては、会社経営や会社財産の管理処分における権限が管財人に移ってしまうので、経営者の経営権は消滅することとなり、経営者に対する経営責任が問われることになってしまうでしょう。また、会社更生の手続きは大規模なため、手続きの完了まで長い期間を必要とする、というデメリットも挙げることができます。

次いで私的整理について説明します。私的整理については様々な方法がありますが、大別すると、⑤スポンサー支援型、と⑥自主再建型、に2つに分けることが可能です。

⑤スポンサー支援型

スポンサー支援型の私的整理には、債務企業が減増資を実施してスポンサーから直接出資を受ける方法(⑤-1:現状利用タイプ)と、事業譲渡や会社分割などを利用して新会社、あるいは別会社(第二会社)を設立して、債務企業の事業の中で収益やシナジー効果が期待できる事業を移管させて債務企業その譲渡代金や分割した対価を受領して返済に充当するという方法(⑤-2:第二会社方式)に2つがあります。

⑤-1:現状利用タイプ

現状利用タイプとは、現状の債務者(会社)を現状のまま利用する方法のことで、スポンサー企業が債務企業の株主から株式譲渡を受ける方法や債務企業の100%減増資を実施してスポンサー企業が新しく募集されることになる新規株式を引き受ける方法、が挙げることができます。

この手法によるメリットは、事業に関する許認可承継の問題が、原則として、発生しないことを挙げることができます。また、債務がスポンサー企業によって全額返済されるようなことがあれば保証債務を請求されるようなことは発生しません。また、債務企業の清算手続も不要です。

一方でデメリットとしては、スポンサー企業がまったく想定していなかった偶発債務が発生した場合には責任を負わなければならないという点があります。また、債務企業の不採算部門については、たとえコストが生じたとしても、閉鎖しなければならない可能性があります。

⑤-2:第二会社方式

第二会社方式とは、スポンサー企業へ債務企業の事業譲渡を実施する方法のことです。債務企業で会社分割を実施して債務企業がスポンサー企業に対して新設分割会社の株式を譲渡する方法やスポンサー企業への吸収分割を実施する方法が考えられます。

この手法によるメリットとしては、採算性が高いる事業やスポンサー企業の事業とシナジー効果が高い事業だけを選んで事業の承継が可能なことや債務企業が負っている偶発債務を承継することがない、といったことを挙げることができます。

一方で、スポンサー企業に事業を承継させた債務企業側には、原則として、別に清算手続を実施しなければならない、というデメリットがあります。債務企業の清算手続において、一部債権のカットが発生したようなケースでは、保証人は保証した債務を請求されることになってしまいます。

また、債務企業の清算手続きとして破産手続きを選んだ場合には、会社分割、新設会社株式の譲渡、事業譲渡、などが否認されてしまう可能性がある点には注意が必要です。さらには、事業に関する許認可の承継が認められないようなケースも考えられます。

スポンサー型の場合には、スポンサー側の意向によって手続の選択がなされることが多いので、特に偶発債務に対する負担を嫌がって、第二会社方式が選択される傾向が強いようです。

⑥自主再建型

自主再建型の私的整理には、借入金の返済金利はそのままに据え置いて元利金の支払日だけを繰り延べる方法(狭義の純粋リスケ型)や借入金の適用金利を減免して貰ったうえで元利金の支払日を調整する方法(純粋リスケ型)といった「⑥-1金利減免型」と、元利金の一部の返済免除を受ける方法(純粋カット型)や債務の一部資本化を狙ったDESDebt Equity Swap)、債務の一部劣後債務化手法であるDDSDebt Debt Swap)といった「⑥-2:債務カット・実質資本化型」と言われる方法があります。

⑥–1:金利減免型

金利減免型のメリットとしては、準則型私的整理手続(私的整理の中で一定の準則やルールに沿って実施される手続きのこと、中小企業再生支援協議会による再生支援スキーム・事業再生ADR・私的整理ガイドライン・特定調停、などの方法を意味しています)に拠らずとも金融機関が受け入れる場合が多い点を挙げることができます。また、将来においてはあらためて金融支援を受けやすくなる点もあります。さらに、経営責任の追及や保証債務の請求が行われにくい、免除益に対する課税の問題(債務の大部分の弁済を免除されるようなケースでは多額の債務免除益が発生しますが、このような課税負担を理由にして事業の再生が困難にならないように課税対策が必要)が生じない、といった利点も考えられます。

一方で金利減免型の私的整理の場合には、返済総額そのものは減少しない(除く、金利分のみは減少するケース)、というデメリットがあります。また、債務企業の財務内容を改善させるのに時間がかかる、資金繰りが厳しい債務企業の場合には選択することができないケースがある、といった点も考慮すべきデメリットです。

⑥-2:債務カット・実質資本化型

債務カット・実質資本化型は、債務者側の企業にとっては返済負担が減るので前述した「⑥-1:金利減免型」よりも好ましいと考えられますが、一方で債権者である金融機関などからは簡単には受け入れることのできない方法であるとも言うことができます。債務カット・実質資本化型の手法としてはDESDDSを挙げることができます。

DESDebt Equity Swap、債務の株式化)

DESとは、債務(Debt)と株式(Equity)を交換(Swap)する方法のことで、「債務の株式化」と呼ばれており、既に融資を実行している金融機関が業績悪化で経営不振に陥っている取引先をサポートするらめに利用されるケースが一般的と考えられます。

DESによって、債務企業は債務超過の状況を解消することが可能になり財務体質を改善することができます。また、借入金(有利子負債)を削減することもできるので、利払い・元本返済が不要となり、資金繰りも好転することが期待できます。一方で、債権者側である金融機関は債務とSwapして株式を保有することになるので、株主として新しく企業経営に影響力を及ぼすことが可能になります。

DDSDebt Debt Swap、債務の一部劣後債務化)

現在の借入金を劣後ローンとして新たに借り換えることをDDSと言います。劣後ローンとは、他の債務に比べて弁済順位が劣っている借入金のことを意味しています。債務の弁済順位が劣後するということは、もし融資先の企業が破産などをしたら支払順位が低いので他の一般債権への支払が終了した後に資産の分配(返済)を受けられる、ということを意味しています。

劣後ローンの中でも一定の要件を満たしている資本的劣後ローンと呼ばれるものは、金融機関においては資本と見做されるので、これまでよりも好条件で融資を受けることができる可能性があります。しかし、金融機関からDDSを受けるケースにおいては、指定された財務指標を一定数値以上にキープしなければ優遇措置が消滅するなどの特約(財務コベナンツ、と呼ばれています)が課される場合が多いと思われます。

債務カット・実質資本化型のメリットとしては、返済総額を減少させることができ、資金繰りも少しずつ安定・維持しやすくなる、早い段階で会社の財務内容を改善させることが可能、といった点が挙げられます。

一方で、準則型の私的整理手続に拠らないものの場合は金融機関が受け入れる可能性が低い、債務企業に対しては経営責任追及、保証債務の請求が実施されてしまう可能性が高い(多い)、DESの場合には株式評価に時間や手間がかかるうえに金融機関に自社株式の(一部を)支配される=経営権(の一部)を握られてしまう、返済免除のケースでは免除益課税に対する対策が必要、といったデメリットを挙げることができます。

 

(2)倒産を避けるためには

企業が破綻=倒産してしまうことを避けるためには、経営者は経営上のどのポイントに注意を払っておくべきなのでしょうか。新型コロナ感染症の影響で多くの企業が破綻していますが、それらの例も含めて、最も重要な点は流動性の確保=キャッシュの確保、だと考えます。キャッシュアウトだけが続けば会社を運転する資金(仕入れや加工のコスト、従業員への給料など)が枯渇してしまい、会社を機能させることができなくなってしまいます。それではキャッシュを確保するためには具体的にどのような方法があるのでしょうか。

キャッシュフローがマイナスになる要因についてキャッシュフローがマイナスになる要因とその影響を解説しますの記事もご覧ください。

①補助金・助成金や融資を検討

今回のコロナ禍においても、公的機関から様々な補助金や助成金(持続化給付金、雇用調整助成金、など)が、制度の適用ハードルを緩和するなどして、アナウンスされました。会社の資金繰りに問題が生じないようにこのような制度の活用を早期に検討して、準備対応しておくことが極めて重要です。

②資産売却

遊休資産のように企業活動に貢献していない資産を保有しているような場合には、売却してキャッシュ化しておくことが重要です。資金繰りが厳しくなってから急に売却しようとしても、買い手が現れない可能性がありますし、買い手が現れたとしても安く買い叩かれてしまうかもしれません。普段から無駄な資産はないか注意しておくことです。

③規模(事業サイズ)の縮小

会社の規模が必要以上に大きくなっている可能性はありませんか。特に不採算事業などを抱えているような場合には、事業整理をして会社をスリム化して余計なコストがかからないようにしておくことも大切です。業績の良い事業に集中して経営することで倒産を免れる可能性が高まります。

④リストラ

原則として、簡単に従業員を辞めさせることはできませんが、会社の業績が著しく悪化して雇用を維持できなくなっているような場合には整理解雇も止む無しと判断される場合があります。しかし、リストラをしたからといって、簡単に業績が回復するわけではありません。会社の雰囲気も悪化しますし、残った従業員の士気も大きく下がってしまうことが考えられますので、リストラの選択は慎重に判断するべきでしょう。

⑤M&A

どうやってもこのままでは会社の将来が見通せない、といった場合には、体力のある企業に会社・事業を売却(M&A)して生き残りを図る、といった方法が考えられます。ただし、売却された会社においては、人員削減や経営者交代などの痛みが生じることが当然ながら考えられますので、売却条件の精査は不可欠でしょう。

 

2.経営破綻した場合の経営者への影響

前述したように多くの中小企業では経営者が会社の債務に個人保証をしているケースが多いものと思われますが、会社が経営破綻=倒産した場合には、経営者にはどのような影響が生じるのでしょうか。会社が倒産した場合の経営者への影響について説明します。

(1)会社が破産した場合の経営者の債務への影響

中小企業の経営者は、会社が借り入れている債務やリース債務などの連帯保証人となっているのが一般的です。しかし、経営者個人としてもカードローンで借金をしたりして会社の運転資金を提供しているケースも多いでしょう。したがって、会社が破産申立をしたような場合には、大部分のケースで、経営者の自己破産の申し立ても同時に行われていると考えられます。

経営者個人の破産手続きにおいて免責決定を受けられれば、連帯保証債務を含めて、経営者の個人的な債務に対する支払義務も消滅します。もし、会社のみに破産の申立が行われたとすれば、経営者は連帯保証債務を含めて個人分の債務を背負い続けることになります。そのため、関与している弁護士などからは、会社に対してと同じタイミングで、経営者個人に対しても、破産の申立てを行うことを推奨しているケースが多いようです。

(2)経営者の個人資産はどうなるか

経営者が自己破産を申し立てた場合は、経営者個人が保有している資産の提供も必要となります。つまり、追って説明する「自由財産」以外の個人財産は、裁判所が選任した破産管財人が換価して回収する、という流れになります。

上記のケースで影響が大きいと考えられるのは、経営者が所有している自宅です。自宅を所有しているケースでは、個人再生といった手法をを検討する可能性もあるものの、会社が破産した後でもある程度の収入がないとこのような手法を実施することは困難であり、残念ではありますが、実際には断念するしかいないと思われます。

(3)経営者個人が破産しても提供しなくてよい財産=「自由財産」とは

経営者社個人が破産した場合であっても破産管財人が換価も回収もしない、経営者個人が自由に使ってもよいざいさんのことを「自由財産」と呼んでいます。「自由財産」とは以下のような財産を言います。

・破産手続の開始後に取得した財産

99万円までの現金

・家財道具などの差押禁止財産

・上記以外で、裁判所が自由財産として拡張することを認めた財産

また、裁判所によっては、上記の他に一定額以下の預貯金や生命保険などを自由財産の拡張として、経営者個人に残すようにしているケースもあります。なお、経営者の家族が所有している資産を提供することは不要です。

 

<まとめ>

企業が破綻する、ということは法律的にはどのようなことなのか、企業が破綻するというタイプにはどのようなものがあるのか、さらに企業破綻を防止するための方策や会社が破綻した場合の経営者個人への影響などについて纏めてみましたが、重要なことは、なるべく早いタイミングで、あるいは恒常的に会社を動かせるだけの資金(キャッシュ)を確保してことです。

常にぎりぎりの資金繰りを続けているような企業の場合には、今回のコロナ禍のような突発的な状況には対応することが困難である、と言えます。したがって、常に会社の資金繰りには十分な注意を払っておく必要があるのです。

資金繰り改善に関する会社の資金繰りが厳しい時!経営者が行うべき3つの改善策とは?の記事もご覧ください。