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CVCとは? VCやM&Aの相違点について徹底解説します

コーポレートベンチャーキャピタルをイメージする画像 融資知恵袋

CVCとはコーポレート・ベンチャー・キャピタル(Corporate Venture Capital)のことで、投資を本業とはしていない一般事業法人によるベンチャー企業への投資のことをいいます。原則として自社が営んでいる事業との関係が深い、シナジー効果が期待できるような企業に対して投資を実施するケースが多いと考えられます。

本稿ではCVCとはどのようなものなのか、その概要について説明したうえで、CVCのメリットや留意点、M&AVCといった手法との相違点、さらにCVCファンドの設立目的や運用評価、などについても説明します。

 

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1.CVC(Corporate Venture Capital)とは

ベンチャー企業に対する投資の手法としては、(1)本体出資(自らが出資するケース)、(2)VC出資(社外のVC(ベンチャーキャピタル)を通じて出資するケース)、(3)CVC出資(子会社やファンドなどを設立して、そこを通じて出資するケース)、の3つに大きく分けられます。

ベンチャー企業

ベンチャー企業の定義には様々なものがありますが、イノベイティブな技術やアイデアをベースにしながら、新たなビジネスやサービスを推進・展開するような企業、を意味しています。一般的には、以下のような特徴を有する企業を指す場合が多いと考えられます。

・成長プロセスの途中である企業

VCVenture Capital、ベンチャーキャピタル)などの投資機関から資金的なサポートを受けている企業

ベンチャー指定(エンジェル税制[ベンチャー企業に対する投資促進のためにベンチャー企業に投資した個人投資家に対しては税制上の優遇措置を施す制度]の対象企業であるという認定)を受けている企業

このうち、(3)のCVC出資の場合は、CVCによるファンドを組成することが一般的です。このCVCファンドは事業会社自らの資金によって組成されており、ファンド運営については社内の投資部門や子会社、あるいは外部のVCVenture Capital、ベンチャーキャピタル)に委任するケースが多いでしょう。

自社の資金で投資を実施する、ということは、他の投資家を気にかける必要がない、と言うことができます。したがって、企業買収(M&A)を実行した場合ほどには強制力を発揮することはできないにしても、投資した相手先企業への発言力はかなり大きくなるものと考えられます。投資先企業と良好なリレーションシップ(関係)を構築・維持することが可能であれば、最大限の事業シナジーを発揮・実現する、という投資目的に沿った、より効果的な投資を実行することができるでしょう。

(1)VC(ベンチャーキャピタル)との相違点

それではCVCは従来のVCとはどのような点に違いがあるのでしょうか。CVCVCも企業のスタートアップ・ステージにおいて、投資というサポートを実施するという意味では同じような仕組みにはなっていますが、それぞれの目的には大きな相違点があります。

VCファンドの最大の目的はキャピタルゲインの獲得にあります。一般事業会社、金融機関、機関投資家、などから投資資金を集めて、将来有望だと思われるベンチャー企業に対して投資します。そして、そのベンチャー企業の数年後における社会的な評価(市場価値、Market Value)を予測して、上場した時の株の売却益(キャピタルゲイン)を狙うことになります。したがって、その投資目的から考えると、出資対象のベンチャー企業は出資元企業などの事業に関連している事業に取り組んでいる必要性は全くないことになります。

一方で、CVCの主要な投資目的は自社の本業における更なる成長・拡大にあります。したがって、投資対象となるベンチャー企業も、協業することによる利益創出が可能であると判断されたベンチャー企業に限られるのです。つまり、投資専門会社が運営しているVCファンドとは異なり、原則として、一般事業会社である大企業やその子会社が自己資金を利用して設立・運営するケースが多いと思われます。

CVCを活用した場合には、事業会社にとっては、一から自社で研究をスタートしたり開発をしたり、といった進め方に比べると、はるかに安いコストや低いリスクで新規の事業を始めることが可能になります。

一方で、ベンチャー企業側は、自社の事業領域と関係が深い大手企業との関係を構築・強化できることが、投資される資金以上に意味があるものと考えられます。最初から協業を見据えての投資=資金提供、であればより一層多くの成長のチャンスを期待することが可能になるでしょう。

【通常のVCファンドとCVCファンドの比較】

通常のVCファンド

CVC

投資資金の拠出者

多数の投資家(機関投資家(保険・年金など)・事業会社(大企業)・個人(富裕層))

単独の事業会社(大企業)

ファンドの運用

通常のVCファンドを通じてベンチャー企業に投資

CVCファンドを通じて協業を想定しているベンチャー企業に投資

狙い

キャピタルゲイン獲得による財務的なリターン

事業的なシナジーを通じた財務的なリターン

(2)M&Aとの相違点

M&Aにおいては、買収側企業が対象の企業を吸収することになります。被買収企業の経営権を獲得して、M&Aによって生じた利益は全て享受することが可能になります。しかしながら、もし損失が生じたような場合にはその損失の全てを被ることにもなるのです。

このようなM&Aに対して、CVCにおいては主に投資先の技術だけを利用することになります。MAとは違い当然ながら投資先の経営権を握るようなことは考えられません。M&Aと比べて、CVCの場合はローリスク・ローリターンである、と言うことができるでしょう。ただし、将来的なM&A候補企業を調査・探索するという探す目的でCVCを実施するケースもあるようです。

つまり、不確実性が非常に高いベンチャー企業を最初からM&Aで自社内に吸収してしまうよりも、CVCファンドを通じていくつかのベンチャー企業に出資を行うことで、投資ポートフォリオを構築してリスクを抑制することができる、という考え方です。

(3)日本国内のCVCファンドの状況

日本国内では、2000年代のベンチャー・ブームの際に、大手電機製造業などを中心にしてCVCファンド設立の動きが拡大しました。しかし、残念ですが当時の多くのCVCは撤退・縮小することとなりました。

その頃は、大企業が大手VCCVCファンドの運用を任せる形態(委託)が一般的でしたが、VCの多くが金融機関系のVCルで、大企業との協業をアレンジすることや新規事業を育成することに関するスキルやノウハウが欠けていたことが大きな要因だったと考えられています。結果的に十分な結果を残すことができませんでした。また、大企業の側においても、ベンチャー企業との協業を推進できるような人材が不足していたことにより、十分な協業体制を構築できなかったことも失敗の原因のひとつであると言えるでしょう。

その後に約10年が経過して、2011年頃から再度国内ではCVCファンドの設立が活発化してきました。最初にITや通信関連の企業におけるCVC設立が活発化して、その後は、メディア関連企業・製造業・サービス業、などへ動きが少しずつ拡大しています。

2000年代には大手VCCVCファンドの運用を委託するケースが一般的でしたがが、最近では大企業が自らCVCファンドを運用するといった、これまで以上に積極的かつ主体的にCVCファンドの運用に取り組むケースが増えています。

その結果、投資先であるベンチャー企業との協業に関するプレスリリースが発表されるケースや、投資先のベンチャー企業を最終的には買収(M&A)して自社の提供サービスとして組み込むようなケースなどが見受けられており、成功事例も確実に増えています。

しかし、一部の大企業においては成果が出てはいるものの、CVCファンドを立ち上げたにもかかわらず実態としてはまだ模索中、という大企業の方が多いと考えられます。日本国内の主なCVCファンドについて紹介します。

主なCVCファンド

ファンド/

プロジェクト名

時期

規模

(ファンド総額)

概要

GREE Ventures

201111

20億円

事業を立ち上げる前の段階からヒアリングや創業サポートを実施し、事業として本格的にスタートするタイミングで投資する、というきめ細かい支援に特徴があります。

投資地域は、日本、東南アジア、インド、などとしていて、で5千万円~3億円/1社あたり、の投資を行っているようです。

主な投資先は、R20186月には、みずほキャピタル、OLMベンチャーズ、などと共同で、カバー株式会社に約2億円を投資しています。

KDDI ∞ LaboKDDIムゲンLabo、含むCVCファンド)

201112

30億円

本プログラムに採択されると、サポートを受けながら約5ヶ月間の時間をかけて実証試験を実施して結果を評価することになります。

対象の事業領域は、主に5G技術を活かした事業としており、ロボティクス、IoTAI、ブロックチェーン、ドローン、などとしています。

これまでのプログラム採択企業としては、エウレカ、giftee、などを挙げることができます。

NTTドコモ・ベンチャーズ

20132

100億円

その名の通りNTTドコモのCVCファンドです。

主な投資対象の領域はFintechやヘルスケア、などのようにNTTドコモの事業とシナジー効果を見込むことが可能なものになっています。

具体的な投資先としては、GA Technologies、トレタ、電脳交通、などを挙げることができます。

サイバーエージェント

201310

100憶円

対象領域はインターネットビジネスに特化しており、シード期からアーリーステージ期にあるベンチャー企業に対してビジネスの立ち上げサポートを実施しています。

また、次のビジネス・ステージのための資金調達を支援しています。

主な投資先としては、コードキャンプ、クラウドワークス、POL、などを挙げることができます。

セゾンベンチャーズ

20156

非公開

主な対象企業は、Fintechに取り組んでいるベンチャー企業、クレジットカード会員の資産情報などクレディセゾンが保有している経営資源を活かした新たなビジネスに取り組んでいるインターネット・モバイル関連のベンチャー企業、などとなっています。

三井不動産(31VENRURES

20162

50億円

三井不動産とグローバルブレインが共同設立したファンドで運営はグローバルブレインが担当しています。

三井不動産グループの事業とシナジー効果が高い事業に対して、発掘・育成・サポートを実施しています。

三井不動産との協業の可能性が高い企業には、三井不動産が直接投資を行うケースもあります。

投資領域は、インターネット技術と不動産に代表されるリアル・サービスを連携させた事業への投資が多いようです。

主な投資先には、クリューシステムズ、リビングスタイル、などが挙げられますが、となる企業のステージはレートステージが中心です。

Sony Innovation Fund

20167

100憶円

日本を代表する国際的な企業ソニーによるCVCファンドです。

AI、ロボティクス、といったソニーが注力している事業領域において、外部の優秀な研究者やスタートアップ企業などとのアライアンス(協業)をこれまでよりもグローバルに推進して、自社グループ内の幅広いリソースを活用した投資先企業への事業成長サポートを通して、より広範囲なエコシステムの創出を目標に設立されました。

上記の他にもCVC(ファンド)の数は近年急激に増加しており、事業シナジーを創出できる点に魅力を感じるベンチャー企業にとっては非常に有力な資金調達手法のひとつと考えることができるでしょう。

 

2.CVCのメリットとデメリット

上記のように現時点で数多くのCVCが設立されており、この勢いはしばらく続くものと考えられますが、CVCのメリットとデメリットとはどのような点にあるのでしょうか。

(1)メリット

➀意思決定の迅速さ

多くのCVCでは一般事業会社の子会社が投資を実行しているケースが多く、事業会社本体の意思を比較的早く正確に投資に反映させやすいと考えられます。事業会社本体で投資の意思決定をする場合には、大企業になればなるほど、余計な時間や無駄な手続きが必要になる場合が多く、最悪の場合には投資のタイミングを逃してしまう可能性さえあります。

しかし、投資の意思決定を子会社に任せることにより、無駄を省いた意思決定が可能になりますし、親会社の投資方針を徹底させることで親会社の意向に反するような投資は排除することが可能と考えます。投資サイズにもよりますが、CVCは比較的小規模な投資を行うには適した投資主体であると考えられます。

②情報の収集

CVC投資を実行する前の*デューデリジェンスを通じて対象企業の情報をある程度は把握することが可能になります。次に、ベンチャー企業に投資中の状態であれば、投資元企業の人材が投資対象のベンチャー企業に役員などとして出向・派遣されることが大いに想定できますので、ベンチャー企業が保有しているノウハウ・技術やビジネスモデルに関してより深い情報を得ることが可能になるでしょう。

そして、投資後においては、投資先企業の業績などから当該事業やマーケットの将来性を予想することができるでしょう。もし、この事業が失敗に終わった場合であっても、失敗を通じてマーケットの将来性を学ぶことが可能になると考えられます。

*デューデリジェンス

デューデリジェンス(Due Diligence)とは、投資を実行する際に、投資対象となる企業や投資先の企業価値やリスクなどを事前に調査することです。「デューディリ」「デューデリ」、あるいは「DD」などと略されることもあります。デューデリジェンスでは、財務、法務、ビジネス、人事、環境、など様々な観点から調査することになります。

(2)デメリット

➀コストがかかる

一般的に、ベンチャー企業への投資を考えると、M&ACVCを比較した場合、CVCの方が割安であると考えられます。しかし、入札のような形で他社との競争状態になっているようなベンチャー企業の場合には金額が高騰してしまう可能性もあります。したがって、どのような場合であってもM%AよりもCVCの方がコストがかからないと言い切ることはできないのです。

また、CVCによる投資に精通している人材を準備(採用・教育など)するためもコストがかかります。そもそもベンチャー企業投資の成功率は決して高くはありませんので、時間と費用がかかることが十分に考えられます。

②投資先の選定が難しい

どのようなベンチャー企業に投資すればよいのか見極めることは非常に難しいことです。ましてや金融機関での投資経験がない人の場合であれば、事業としての定性的な効果を見通すことは得意ではあっても、財務的な観点での投資効果を予測することはけして簡単なことではないと思われます。

③運用ノウハウの不足

前述したように、事業会社においては十分な投資ノウハウを持っているような人材は多くはないものと思われます。M&Aの場合であれば強固にグリップして半ば強制的に投資先をコントロールすることも可能かもしれませんが、CVCの投資先にはそこまでの強制力は及ばないことが多いので、CVC投資としてのオリジナリティを維持することは可能です。

しかしながら、自社にとって有益な投資となるべく投資先をコントロールしてゆく、という点においては、具体的に詳細な管理手法やノウハウが先例や代表的な方法として確立しているわけではありません。多くのCVCの担当者は手探りの中で投資先のコントロールを実施しているいるのが現状であると思われます。

 

3.CVCファンドの設立について

CVCファンドを設立する際には、投資戦略の策定、投資ガバナンス基盤の設計、ソーシングエコシステムの構築、という3つのモジュールに関する検討が必要です。これらのモジュールが適切に連動することで、グループ会社本社から付与された経営資源を適切に活用できる状態となり、CVCが持続的に運用されることになるのです。特に投資戦略の策定は全ての活動の起点になります。

(1)投資基本方針

➀投資領域

CVC基本方針を踏まえて、技術・業界・地域の3つの視点から投資資源を特定します。

a) CVC基本方針の明確化

・イノベーションの分類

CVCに対する取組方針

b) イノベーション領域を特定

・投資対象の技術

・投資対象の業界

・投資対象の地域

②投資ポートフォリオ

スタートアップ投資の外部環境を踏まえて、投資資金の分配を決定します。

a) スタートアップの資金調達状況のベンチマーク

・入口:投資環境

・出口:EXIT環境

b) 資金配分方針の確定

・イノベーション領域

・投資ロット

・投資リターン

・投資制約条件

③投資スキーム

投資領域や投資ポートフォリオの構想を実現するための柔軟な投資スキームの決定

a)  CVC子会社を活用した投資スキームの整理

VC活用の有無

・ファンドの有無

・社外LPLimited Partnershipの略で有限責任を持つリミテッド・パートナー(LP)により構成される組織の形態)の有無

b)  CVC子会社を活用した投資スキームの確定

CVC進化論

・その他の留意事項(会計・税務、法務、など)

(2)投資判断基準/投資プロセス

➀投資判断基準

スタートアップ企業への投資判断の可否を判断する定量・定性の基準を策定します。

a) 定性基準の策定

・投資基本方針を踏まえた定性評価項目の抽出

・定性評価シートの作成

b) 定量基準の策定

・投資基本方針を踏まえた定量評価項目の抽出

・財務モデルの構築

②投資運用プロセス

CVC構想を実現するための推進組織の仕組を構築します。

a) 推進組織の役割を定義

・各組織の役割(コーポレートと事業本部との連携など)

・組織の目標設定

・必要なスキル

・必要な要員数

b) 推進組織運営プロセスの策定

・権限移譲方針

・投資判断プロセス

(3)ソーシングエコシステム

➀ソーシングネットワークシステムの構築

各種ソーシング手法の特徴を踏まえたうえで、取組の優先順位を決定します。

a) ソーシング手法の整理

CVCに繋げるためのアクセラレータープログラムの運営

・投資領域に応じたVCの活用

・投資領域に応じたリサーチベンダーの活用

②CVC運営パートナーの選定

CVCの基本方針に沿ったスタートアップ企業を確実にソーシングするパートナー企業を選定します。

a) ソーシングパートナーに求める要件の整理

・イノベーション領域に対するナレッジ

・スタートアップへの支援内容(ハンズオン支援など)

b) ソーシングパートナーの比較検討・紹介

・アクセラレーター

VC

・リサーチベンダー

 

4.事業とのシナジー効果創出に関するポイント

CVCファンドを活用してベンチャー企業とのシナジー効果を発揮するために必要なポイントについて説明します。

(1)目的の明確性

大企業がCVCファンドを立ち上げて投資を実行する目的はどのような点にあるのでしょうか。よく言われているのが、ベンチャー企業の革新的な知見やノウハウを活用して新たな事業の創出に役立てたい、ということや、ベンチャー企業と協業することにより既存のコア事業を強化したい、というものです。このような目的は耳あたりの良い言葉として響きますが、実際にはより深く検討するべき目的というものがなければCVCビジネスを成功させることは簡単ではありません。

CVC活用のためには、

  • 具体的にどういった新規事業を立ち上げたいと考えているのか?
  • 事業のシナジー効果として、どういったものを具体的に期待するのか?
  • 投資対象となる事業領域はどこなのか?
  • 投資対象はプロダクトなのか、それともサービスなのか?
  • 要素技術(製品を構成する要素に関する技術のことで、製品開発に必要となる基本技術であり、製品の根幹をなしているような技術のこと)への投資も対象とするのか?
  • 人材獲得を目的とするような投資も対象になるのか?
  • 会社が設立されてから間もない社員数人程度のベンチャー企業も投資対象になるのか?
  • 既に事業が順調に回転しているようなミドルステージ以降のベンチャー企業も対象となるのか?
  • 必要とする財務リターンはどのくらいなのか?
  • IPO(新規株式公開)と同水準のキャピタルゲインのような高いリターンを目的とするのか?
  • (主目的は事業シナジーなので)ファンド全体では収支トントンでも問題はないか?

といった点にまで踏み込んで検討することが必要になります。

投資目的が明確でないままに投資を実行してしまうと、投資することそのもの自体が目的化してしまう可能性が高く、何を狙ったファンドだったのかわかなくなったまま投資実績ばかりが積み上がるということになってしまうかもしれません。

これは、CVCファンドやCVCファンドの運用担当者に対する評価にも関係があるかもしれません。多くのCVCファンドにおいては、運用期間は7年から10年程度、そして、その内、投資期間は初期の3年から5年で、残りの期間はEXIT(投資回収)期間として設定されるので、CVCファンドの運用担当者は、初期の数年間は投資した件数で評価されるのが一般的です。その結果、担当者としては1つでも多くの投資案件を積み上げたいというインセンティブが生じます。したがって、投資目的に沿わない投資を回避するために、CVCファンドの設立目的を明確にして、わかりやすい投資対象企業のイメージを関係者全員で共有することが極めて重要なのです。

(2)体制の充実

投資業務の経験者を揃えて、成長が見込めるベンチャー企業に投資して、予想通りに成長したベンチャー企業を買収して社内に取り込み、それを新規事業として更なる成長を期待する、というような投資モデルであれば、少数精鋭のメンバーでも業務を回すことはできるでしょう。

しかし、投資後に事業面でのシナジー効果を追求するのであれば、社内体制をより充実させる必要があるでしょう。投資さえ実行すれば事業シナジーが勝手に生まれる、なんてということはないわけで、ベンチャー企業の経営者も交えて協業の構想・計画策定の段階から実行するまで共同して推し進めるためには、案件ごとに専任担当者を設置する必要があると考えられます。投資先のベンチャー企業との協業が軌道に乗るようであれば、さらに必要な人数を増員して、最終的には投資部門からは独立した組織へと成長・発展する場合も想定したうえで資源(人材や資金など)を投入する必要があるのです。

(3)投資先ベンチャー企業経営者との信頼関係の構築

CVCファンドからの投資は最初の段階ではどうしてもマイナー出資になるケースが多いと考えられます。出資比率において、もしマジョリティを狙うのであれば最初から本体からの直接投資になる場合が多いと思われるからです。つまりCVC投資の初期段階においては、ベンチャー企業にとっては、株主としてはそれなりの扱いをしてくれはするものの、経営に大きな影響を与える存在としては認められてないと考えられるのです。

つまり、ベンチャー企業と一緒に事業のシナジー効果を生み出すためには、投資先企業の経営者との信頼関係の構築が極めて重要になるのです。数の論理で押し切ることが難しい以上、自社のみならずベンチャー企業にとってもメリットがあるような提言でないと採用してはもらえないかもしれません。そこで、CVCファンド側がいかに汗をかいて投資先企業に尽くしてくれたのか、といったようなことを積み重ねて信頼を獲得していくことが大切なのです。

もしも、投資がうまくいって、M&Aでベンチャー企業を買収するような場合には、よりしっかりと信頼関係委が構築されていなければ、M&Aを成功に導くことは難しくなってしまうでしょう。ベンチャー企業にしてみれば、いろいろな選択肢を検討できる余地があります。例えば、新たな別の大企業とも協業をスタートさせることもできますし、資金調達を実施して新たな株主を迎えることも可能ですし、また、IPO(株式公開)を目指すこともできるかもしれません。

つまり、強固な信頼関係が構築されていない場合には、CVCファンド側が買収を考え始めた頃には、投資先企業はCVCファンドからの離脱を考えているかもしれないのです。当然ながら株式売買契約書などに、勝手な株式売買などを禁止するような条項を盛り込むことは可能ですが、買収後のことを考えても本質的に双方の経営レベルで信頼関係を築いておくことは必要だと考えます。

利益を出している会社に共通する特徴について利益が出ている会社の特徴とは? 具体的な施策と組織構造について解説の記事もご覧ください。

 

5.CVCファンドの会計と税務

CVCファンドが民法上の任意組合の形態の場合には時価評価は不要えす。取得した未公開株式は簿価のままで計上し続けることが可能ですし、全額を償却してしまうことも問題なく可能です。その一方で、投資事業有限責任組合の形態の場合には、四半期毎に時価評価が必要となります。評価増に関しては直近のファイナンス価格で、評価減に関しては、主観的基準も含めて、25%刻みで実施することになり、決算の際には、公認会計士監査を受けなければいけません

ちなみに、どちらの形態であっても、6月には中間決算、12月には本決算をすることが一般的であり、年2回の決算が義務となっています。また、税務面においては、どちらの形態であっても、*パススルーとなり、それぞれの出資者が税務申告をします。

*パススルー

パススルーとは、投資ファンドなどが得たキャピタルゲイン・配当といった利益に関して、ファンド段階で課税はされないで、課税前のベースで出資者に分配することが可能な形態を言います。

<まとめ>

事業会社が本業とのシナジー効果や新規事業の開拓を狙ってCVCファンドを設けるケースが増えていますが、CVCファンド設立の目的を十分に検討したうえで投資先のベンチャー企業と強固な信頼関係を築くことがCVC投資の成功を左右する鍵となるでしょう。

そういった意味でもしっかりとしたCVC投資方針を策定して、同指針に沿って投資活動を実施することが必要不可欠であると考えます。

また社会や環境に対して良好な影響のある「社会的インパクト投資」について意識していくことが必要不可欠になっています。「社会的インパクト投資」に関する社会的インパクト投資とは? 動向について徹底解説しますの記事もご覧ください。