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労働力不足を補うロボット技術導入方法と気を付けるべきポイント

労働力不足を補うロボット技術導入方法とポイント 業務改善

 

製造業を中心に労働力不足は深刻な状況になっており、業務の効率化を図ることは大きな課題になっています。特に中小企業にとっては、新型コロナ感染症の影響もあり、人材採用には苦戦しており、喫緊の対応が求められていると言えるでしょう。

このような環境下において、人間に代わってロボット技術を活用することで、労働力不足に対応しようとしている中小企業が増えています。本稿では、そもそもロボット技術とはどのようなものか、中小企業で活用されているロボット技術の事例は、ロボット技術のメリットとデメリット、ロボット技術導入時の留意点、などについて詳しく説明します。

1.ロボット技術とは

「ロボット」とは、2014年3月の「NEDOロボット白書2014」(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO))によると、「センサー、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」と定義しています。

これまでのロボットの定義とは

  • 「移動性、個体性、知能性、汎用性、半機械半人間性、自動性、奴隷性の七つの特性をもつ柔らかい機械」(1967年に開催された第1回ロボットシンポジウムにおける森政弘・合田周平による定義)
  • 「産業用ロボット」の定義については、「自動制御によるマニピュレーション機能または移動機能をもち、各種の作業をプログラムによって実行できる、産業に使用される機械」(JIS(日本工業規格)の「産業用マニピュレーティングロボット-用語」(JIS B 0134-1998)の用語の1100番)

などとされていましたが、学術的な意味でのロボットと産業界における意味はそれぞれ異なっており、本稿においては、前述したように「実用的なロボット」について論じることとします。

(1)ロボットの技術要素

ロボットは非常に多くの要素技術から構成されていますが、ここではそれらの要素技術の中でも、人工知能(AI)、センシング・認識、機構・駆動(アクチュエータ)・制御、OS・ミドルウェア等、安心安全評価・標準、といったコアテクノロジーについて説明します。

①人工知能(AI)

人工知能(AI)とは、人の指示や周囲の状況に応じて、自ら考えて行動するための技術のことです。人工知能(AI)の課題としては、既知の情報に基づく一問一答での応答は可能だが、会話や指示の文脈や行間を理解した類推に基づく自然な応答や、未知の状況への対応が困難(現時点では、機械翻訳も未完成、発展途上)な点です。

また、あらかじめプログラミングされた動作は可能だが、作業の進捗や周辺状況を認識して自律的にタスクを変更・決定することは困難です。さらに人工知能のモジュール化(例えば、思考系と反射系など)などにして検討する必要がある点も課題です。

②センシング・認識

センシングとは、周囲の状況に関する情報をロボットに取り込むための技術、のことで、部分的に隠れた状態(オクルージョン)や輪郭が切り出せない形状の物体は判別が困難なこと、 逆光や暗闇などの特定の環境下では物体を認識できない場合があること、また、狭い場所での自動走行などの際には、従来よりも高速に画像処理する必要があること、などの課題が指摘されています。

また、雑音の中から必要な音を拾い出すことは困難であること、複数の人が同時に話している場合に特定の声を聞き分けることが難しいこと、柔軟物等の多様な物体を触覚により認識することが難しいこと、屋内外を問わず、複数の周辺環境データを統合し、状況に応じて周辺環境を柔軟に(地図がなくても)認識する必要があること、なども課題とされています。

③機構・駆動(アクチュエータ)・制御

機構・駆動(アクチュエータ)・制御とは、ロボットが外部に働きかけを行うための装置に関する技術のことです。人間と同等のサイズ・重量で、力強さ(出力)と器用さ(動作の精密さ)を両立させることが困難なこと、現在の剛性の高い機構では柔軟な動きに不向きな場合があること、が課題として認識されています。

また、人工筋肉では細かい位置決め作業などに不向きなこと、複雑形状物や柔軟形状物など日常的に人間が扱うものは事前に情報を得ること無く適切に扱う必要があること、マニピュレータやハンド等については都度専用開発ではなく可能な限りモジュール化を検討すべきであること、も課題として考えられます。

④OS・ミドルウェア等

OS・ミドルウェア等とは、ロボットを動かすための基盤的なソフトウェア等に関する技術のことです。開発・インテグレーション環境に関しては、認識・推論や自律制御などの高次のアプリケーション開発にリソースを集中するための開発/インテグレーション環境・ツール(実際にロボットを製作・使用しなくてもソフトウェアの動きをチェックできるシミュレータ、使い勝手が良く一定程度標準化されたOS・ミドルウェア・プログラミング言語等)を、将来の要素技術の発展に対応させる必要がある、という課題があります。

インターフェイスについては、異なるOSのロボットどうしが対話する場合、あるいは、ロボットに新たなモジュールを搭載する場合など、ロボット及びモジュールのインタフェイスを標準化する必要がある、と言う課題があります。

④安心安全評価・標準

安心安全評価・標準とは、ロボットを安心安全に普及させるための技術・手法等、のことで、ロボットの活用の場が広がることによって生じる、予期し得ぬ潜在的な事故のリスクを顕在化させ、評価する手法が不十分なこと、被験者による安全性等の試験のために(制度的な対応も含め)時間を要すること、ロボットが収集する個人情報の保護、あるいは、ロボットによる個人情報収集(撮影等)に関するルールの検討が不十分なこと、という課題があります。

(2)ロボットの事例

次にロボットを活用している各分野における事例を紹介しましょう。

①ロボットスーツHAL

項目 説明
名称 ロボットスーツ HAL
(Hybrid Assistive Limb)
開発企業 サイバーダイン株式会社
開発目的 人体に装着して身体機能を補助・増幅・拡張することで、障がい者に対する自立動作の支援、介護支援、重作業のサポート、レスキュー活動支援、エンターテインメントなど、を実施します。
寸法・重さ 寸法:高さ1.6m(人体装着型の場合)
重量:下半身型の場合は約15kg、全身一体型の場合は約23kg
利用例 筑波大学附属病院内において、右半身に麻痺がある患者に対して実証実験が行われました。HALを利用することによって、健常な頃とほぼ大差がないペースで歩行することが可能になることが確認されています。
主な構成要素 生体電位信号から、装着者の意図を読み取り動作する「 随意的制御システム」と、データベースから動作を先読みして動作する「自律的制御システム」を備えている。これを実現するために、生体電位 センサと床反力 センサなどから得られる情報を基に、各関節のモータのトルクを制御する。腰にコントロールPCとバッテリを搭載している。

②掃除用ロボット ロボハイター

項目 説明
名称 無人清掃ロボット「ロボハイター」
開発企業 富士重工業株式会社(現株式会社SUBARU)
開発目的 ビル屋内外を自動的に清掃することを目的としており、人が存在しているような環境においても作業をすることができます。また、ビル内においてはエレベータを利用した昇降も自動で行うことが可能です。
寸法・重さ 寸法:長さ1.60m × 幅1.08m × 高さ1.22m
重量:430㎏
利用例 2005年に開催された愛・地球博では、6か月と言う期間に屋外において毎日清掃活動を実施しましたが、この期間に問題の発生はありませんでした。
主な構成要素 主に用いられている要素技術としては、GPSアンテナ、GPS無線機アンテナ、ロボット間通信アンテナ、ブラシ駆動モーター、バンパー、三角測量センサー、障害物センサー、など。
また、清掃ロボットとエレベータに設けられた光伝送装置との通信を用いて、人間がエレベータを動かすように、エレベータを来て欲しい階数に呼び出したり、所定のフロアーへと移動することができるようになっています。

③セラピーロボット パロ

項目 説明
名称 セラピーロボット 「パロ」
開発企業 産業技術総合研究所、販売はNDソフトウェア株式会社
開発目的 福祉施設や医療施設におけるセラピーとして、人を楽しませたり、安らぎを与えたり、ペットを飼うことが難しいケースの代替として、人間の五感を刺激する動物らしい可愛らしい感情表現や行動をするロボットで、気持ちを和ませて心を癒す効果を期待しています。
寸法・重さ 寸法:体長は57cm
重量:2.5kg
利用例 茨城県つくば市にある介護老人保健施設「豊浦」で2003年からパロによるロボット・セラピーを実施しています。この実証実験により、心理的な効果や生理的な効果、さらには社会的な効果があることが確認されています。
主な構成要素 主に用いられている要素技術としては、静穏型アクチュエータ、ユビキタス面触覚センサ、ひげセンサ、ステレオ光センサ、温度センサ(体温
制御)、姿勢センサ、などが搭載されています。また、パロを製作している工房においては、一体ずつ組立から人工羽毛の処理(トリミング)に至るまで職人のハンドメイドで実施されています。

④災害対応ロボット Quince

項目 説明
名称 災害対応ロボット 「Quince」
開発企業 千葉工業大学、東北大学、NEDO、など
開発目的 災害時に人間(消防隊員など)に代わって、現状・現地調査をすることを目的に、有害物質などを取り扱っている被災工場の現況調査や、化学工場における化学物質の漏洩、爆発事故の調査、などに利用されることを想定しています。高い踏破性を持つ移動機構に加えて、カメラなどのセンサ搭載により、リモート操作で状況を確認できる機能を持っています。
寸法・重さ 寸法:全長665mm × 全幅480mm × 高さ225mm
重量:2.5kg
利用例 東日本大震災で被災した福島第一原発の調査に利用されています。
主な構成要素 主に用いられている要素技術としては、標準装備が、モータ、センサ、カメラ、マイクロフォン・スピーカ、PSD センサ、となっており、オプション装備としては、ズームカメラ、マニピュレータ、サーモグラフィ、二酸化炭素センサ、レーザレンジファインダ、などが用意されています。

⑤ロボットカー Google Car

項目 説明
名称 Google Car(グーグル・ロボット・カー)
開発企業 Google、スタンフォード大学
開発目的 交通事故の発生を予防して、人間の自由になる時間を増加させることを目的に開発され、自動車の自動運転化して配送を無人化させることを用途としています。また、カメラとセンサを用いて自分の車の周囲を把握・認識することで、目的地まで自動的に走行させる機能を有しています。
寸法・重さ 搭載される自動車次第
利用例 Google Carの最初の利用者は、視覚障害者の方でした(普通の自動車の運転はできない人)が、ファストフードで食べ物を購入したり、クリーニング店に行くことが可能でした。自動運転の車によって、活動範囲を大きく拡大することが可能であることが示されています。
主な構成要素 主に用いられている要素技術としては、センサ、コンピュータ、などが利用されています。また、自動運転の重要なファクターとして自己位置を推定することを挙げることができます。この点に関しては、Googleが保有している「ストリートビュー」によって蓄積されたデータと照合することが可能でGoogleの強みが発揮されています。

⑥病院まるごとロボット化

項目 説明
名称 注射薬払出ロボット、ロボティックベッド、HOSPIなどの「 病院まるごとロボット化」
開発企業 パナソニック株式会社
開発目的 病院内における作業負荷を軽減すること、危険な作業からの開放、を開発目的としており、ロボットを単体で販売のではなく、病院内の業務を分析してコンサルティングwp実施して、解決方法(システムソリュー
ション)を提案したり、ロボットやインフラの導入を実施したりする機能を有しています。
寸法・重さ 搭載される自動車次第
利用例 「病院まるごとロボット化は、ロボットを利用した解決方法の提案とコンサルティングの実施、というビジネスモデルが評価されたことにより、第5回ロボット大賞を受賞したパナソニックと松下記念病院による生活を支援するロボットソリューション事業です。
例えば、松下記念病院においては、注射薬払出ロボットや病院内自律搬送ロボット「HOSPI」などの利用によって、年間で約3,000万円ものコスト軽減を達成しています。
主な構成要素 主に用いられている要素技術としては、コンサルティングの課題分析にFA分野で活用してきた現場診断ツールである「NEXTセル」を利用しています。他にも、薬剤関連ロボット群、自律搬送ロボット、ヘッドケアロボット、ロボティックベッドなどを活用しています。

 

2.ロボット技術利用のメリットとデメリット

前述してきたように、既に多くの分野でロボット技術は実際に利用されていますが、ロボット技術を利用するメリットとデメリットについて説明します。

ロボット技術利用のメリットとデメリット
メリット デメリット
  1. 生産性向上
  2. 労働力不足の解消
  3. 大変な作業の軽減
  4. 従業員の安全確保
  5. 業務水準(レベル)の向上
  6. 業務水準(レベル)の統一
  1. 導入コスト
  2. 操作者や管理者の確保
  3. トラブル(含む、チョコ停)の発生
  4. 関連作業の検討不足

(1)ロボット技術活用のメリット

ロボット技術を導入する理由としては、「業務の効率化」、「従業員者の労働環境の改善」、「業務水準の確保」、などが挙げられますが、この理由そのものが、ロボット技術を導入するメリットとなるのです。

①生産性向上

ロボットは、休む必要がないので、休日も不要ですし、夜中中であっても稼働させることができます。つまり、人間に比べれば、大きく生産性を上げることが可能なのです。また、残業代もかかりませんし、振替休日も必要ありません。その分の人件費もかかりませんし(電気代などはかかりますが)、コスト削減と生産力強化が図れることになります。

また、従業員そのものの削減も可能になり、経験豊富で給与の高い技術者に単純な作業を行わせることもなくなりますのでに、新製品の開発や研究といった他の業務に注力することが可能になります。また、経営者自身も、本来の責務である、経営の仕事に専念することが可能になります。

②労働力不足の解消

中小企業のみならず、多くの企業で労働力の不足は深刻な問題になっています。少子高齢化が主な原因とされていますが、ロボット技術の導入は、労働力不足の問題を解決する大きな対策のひとつと考えられています。もし、人手が不足している中で受注量が増加してしまったような場合でもロボット技術の導入により対応することが可能になるでしょう。

③大変な作業の軽減

重い品物を運ぶような重労働やちょっとして製品の傷を検査するような神経を使うような業務に従事している労働者の負担をロボット技術の利用により軽減することが可能です。例えば、飲料品メーカーで瓶のひびを確認する作業は目や神経が疲れる業務ですが、この作業をロボットに代替させることにより、精度も確保したまま(あるいはさらに向上したまま)従業員の負担が減る、というメリットが考えられるのです。

④従業員の安全確保

薬品を取り扱ったり、高い場所での作業をしたり、といった危険な業務や騒音や粉塵が発生するような劣悪な悪環境で作業をしなければならないようなケースでも、ロボットであれば人間が作業をしなくても済むので、従業員の安全や健康を確保することが可能です。

⑤業務水準(レベル)の向上

人の手による作業の場合は、長時間労働による疲労などにより業務品質にばらつきが生じてしまうことが考えられますが、ロボットの場合はミスが生じることもなく、常に一定の品質を維持することが可能です。

また、生産したこれまでの履歴情報の取得が可能なので、クレームへの対応もスピーディーに実施することが可能です。加えて、データを蓄積することにより、どのような不具合が多く発生しているのか、といった分析をすることができるので、品質を改善するためのフィードバックをすることもできます。

⑥業務水準(レベル)の統一

ロボットは、作業の精度が高いうえにミスが生じないから、例えば、塗装ムラみたいに作業者の腕前に左右されるようなことはなくて、常に作業の品質や製品の品質を一定に保持することが可能です。

また、作業を均一化することができるので、分析したデータを均質化することや安定化させることもできるので、その結果、製品の品質も安定します。加えて、重い品物の運搬や神経を使う細かい作業も長時間実施することができるし、人間であれば発生するような疲労による品質低下を心配する必要もないので、人間の手による作業に比べると作業効率が良い、と言えます。

ベテランの作業熟練者に単純作業をやってもらう必要もなく、作業割当を効率化することも実現できます。つまり、業務水準(レベル)の統一をすることが可能なので、確りとした品質管理をすることが可能になるとともに、計画に沿った生産管理を行うことができます。

(2)ロボット技術活用のデメリット

ロボット秘術の利用には前述したようなメリットがあるものの、一方では以下のようなデメリットもありまする。しかし、デメリットだと考えられるようなことであっても、適切に対応することで解消は可能です。

①導入コスト

ロボット技術を導入するためには、当然ながら多額の費用が必要になります。ロボット本体のみならず、ロボットの周辺装置や安全対策コスト、技術者育成費用、といったコストも考えておく必要があります。特に中小企業にとっては、この多額の費用は大きな問題として立ちはだかっていると考えられます。

このような課題に対応するために、ロボット本体のみならず、必要となる全てのコストを事前に算出して、予想外のキャッシュ・アウト(支出)が発生しないように注意しておくことが重要です。また、様々な補助金制度が用意されているので、それらの制度を活用する方法も必要かもしれません。

②操作者や管理者の確保

ロボット技術を導入した後は、ロボットの調整や維持・補修などを担当する操作者や管理者が絶対に必要になります。ロボットが誤動作した場合や故障した時などの対応には、正しい知識を保有している担当者が必要です。

素人が勝手に対応してしまうと、ロボット自体を破損させたり人身事故を発生させたりすることがあるので、止めておいた方が良いでしょう。このような課題に対応するためには、自社内にロボット関連の技術に詳しい有資格者を育て上げることが必要になります。

また、新しい製造品種が増えてような場合には、ロボットに動作を教え込ませなければ(ティーチングしなければ)なりません。このような問題に関しては、オフラインティーチングなどの方法で、ロボット操作をせずにプログラムを変更できるようになってきています。

③トラブル(含む、チョコ停)の発生

ロボット技術の導入には、当たり前ですが、チョコ停(何らかのトラブルの発生により生産設備が停止したり空転したり、何度も短時間の停止が繰り返して生じていること)、トラブルの発生、という課題がつきものです。

チョコ停やトラブルが頻発してしまうと「無人化」にはなりません。このような問題に関しても、最近では様々な「チョコ停発見ツール」が開発されており、チョコ停を可視化(見える化)しやすい状況を整備することが可能です。

④関連作業の検討不足

ロボット技術の導入依然には考えられなかった苦労については、事前の検討不足を挙げることができます。このような課題に対応するために、関連した作業全の体を包含した事前検討をきちんと実施しておくことが重要かつ必要です。最近では、シミュレーションソフトなどが発達しており、様々な事前検討をすることができるようになっているので、事前に周辺装置も含めて検討を実施することができます。

 

3.ロボット技術導入時の留意点

ロボット技術を導入する際のメリットとデメリットについて説明してきましたが、本稿では実際にロボット技術を導入する場合の留意点について説明します。先ず、多くの誤解があるのが、ロボットを導入すればなんでもやってくれる、という思いです。いくらロボットであっても適切な課題にしか対応はできないことは理解しておくことが必要です。

(1)運用ルールの策定と見直し

運用ルールには、なぜロボットを自社に導入したのか、何のためのロボットなのか、といった内容を明文化することで、社内における共通認識を保有することが重要です。次いで、導入したロボットを利用した作業手順に関しては、使用する場合基本的な手順を明確にするとともに、誰が、どういったケースに、どのような対応をするのか、を明文化します。

また、ロボットに故障が生じた場合の連絡先(メーカーの連絡先など)を社内で共有しておくことは重要です。また、使えなくなってしまった場合の代替手段をあらかじめ決めておくことも必要でしょう。さらに、運用における禁止事項や注意事項についても明文化しておきましょう。

ロボットの運用ルールは、十分に関係者で検討したうえで、策定する必要があります。できるだけ、本格敵に導入する前に、プロジェクトチームを組成して、テスト運用などを実施しながらルール策定を行うと、より実践的なルール策定が可能になるでしょう。

(2)説明会や研修会の開催

次のステップとしては、実際にロボットを使用する従業員全員に対して、説明会や研修会を開催することが必要となります。従業員の勤務状況によっては、同時かつ一斉には開催できないケースもあるかもしれませんが、そのような場合には、数度に分けて、従業員全員に周知できるまで実施しましょう。説明会や研修会では、以下のような内容を盛り込む必要があります。

最初にロボットの導入目的を周知させることが重要であり、ロボット導入の背景、どういっ問題を解決するためのロボットなのか、を説明する必要があります。次いで、ロボットの機能や特徴、具体的には何ができて何ができないのか、を明確にします。さらに、実際の環境(職場などにおいて)デモンストレーションを実施しながら、具体的に操作方法を説明することも大切です。

(3)マニュアルの作成・配布

運用ルール策定と並行して、ロボットの取扱方法について整理したマニュアルも作成しておく必要があります。運用ルールやマニュアルは、どのようなタイミングでも利用・参照可能なように、現場や従業員が普段いる場所やロボットの常備しておくことが重要です。

マニュアルを作成する場合には、標準的な使い方をメインにすることが大切で、たまにしか利用しないような操作・処理については、別立てのページなどを準備しておくと使い易くなるでしょう。また、実際の運用において、変更・追加が生じた場合には、その都度に更新するとともに、更新したことを従業員に対して周知することが重要になります。

(4)PDCAを回す

ロボットの運用を開始したら、ルールやマニュアルに則ってきちんと運用されているかの運用方法に過不足がないか、などを定期的に確認する必要があります。計画の立案(Plan)、実施(Do)、チェック(Check)、改善(Action)、といったサイクルを何度も繰り返して、成功したケースと失敗したケースを蓄積して、よりよい運用方法を構築するようにしましょう。

チェックをする場合には、問題なく運用できているかだけではなく、利用している従業員に対してどういった効果や影響を与えているか、といったことも確認しましょう。可能ならば、実際に利用している従業員にヒアリングをしたり、アンケートをとったりして、現場の声に耳を傾けて、運用ルールに反映させることをおすすめします。

(5)運用・定着には時間がかかる

ロボットだけに限りませんが、「導入したらそれで終わり」ということはありません。実際に運用してみなければ判明しなかったことは必ず出てくるでしょう。大切なことは、そのような場合に、誰がどのように対応するべきか、ということをあらかじめ定めておいて、発生した問題を最小限に抑制することでしょう。

また、運用ルールやマニュアルを作成して、全ての従業員に対して説明会を実施したしても、実際にそれらが定着するまでには時間がかかることを覚悟しておく必要があると考えます。導入するロボットによっては、一斉・同時に説明会を実施するよりも、段階的に導入していく方が適切かつ効果的なケースも考えられます。実際にロボットを運用していく中において、臨機応変に対応することも必要かもしれません。

まとめ

現在では、大企業のみならず、中小企業においてもロボット技術の導入が進んでいると言えます。中小企業にとっては、ロボット導入による多額のコストをどうやって調達するのか、が大きな課題になっていますが、前述したように、産業用ロボットを購入するための資金に対する補助金制度などが整備されているので、そういった制度を利用することも一案ではあります。

また、特に中小企業においては、導入したロボットを十分に活用するために、前述した留意点を意識することが極めて重要になります。

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