PR

融資の利率はどうやって決まるの?融資利率の決定におけるポイント

融資知恵袋

 

金融機関などが中小企業に融資を実行する際の利率はどのように決まるのでしょうか。

金融機関にとって融資の利率は商品(融資)の値段とも言えますが、利率を高く設定すれば利用する人は減ってしまいますし、逆に低く設定してしまうと金融機関としての利益を損ねてしまうことにもなります。

では、適切な利率を設定するためにはどうすればよいのでしょうか。

金融機関などの融資の金利については、一定の制限はあるものの、貸主である銀行などの金融機関と借主である借入人がお互いに合意すれば、何パーセントでも問題はありません(法律上の上限金利については後述します)。

しかし、それでは利率がどうやって決まるのかを経済的に説明したことになりません。

今回はどうような要因で融資の利率が決定されるのかを説明します。

 

1.融資の種類による金利の考え方

(1) 固定金利と変動金利

融資には固定金利と変動金利によるものがあります。

変動金利とは、融資期間において金利が変動するもので、金利変更日以降(6ヶ月毎、などの金利変更期間が定められていることが一般的です)は新しい利率が適用されて金利計算が行われます。

いわゆるスプレッド貸しと言われている方法で、基準金利に一定の鞘(スプレッド)を上乗せして融資の利率を決める方法です。

基準金利としては、短期プライムレート(短プラ)TIBOR(Tokyo Interbank Offered Rate)で優良な企業に融資をする際の最優遇金利のことです。

以前は公定歩合をベースに決まっていましたが、現在では市中金利に連動して決まっています(この新しい短プラを新短プラと呼ぶこともあります)。

またTIBORとは、金融機関同士による短期資金の取引結果を反映した指標金利のことで、全銀協TIBOR運営機関が算出および公表を行っています。

短プラとTIBORの違いは、調達原資の差としても表れています。

短プラは銀行などの金融機関における預金を原資とした融資となりますが、TIBORベースのスプレッド貸の場合は、銀行間取引による資金調達が原資となっています。

一方、固定金利とは、融資の実行から完済まで金利が常に一定に設定されているものを言います。

最初に決定した利率で利息が計算されますので、あらかじめどのくらいの利息負担があるかを把握することができます。

通常は、金利変動リスクを考慮して、変動金利よりも固定金利のほうが低くなっている場合が多いと考えられます。

スプレッドや固定金利の水準は、融資対象者である借主の信用度によって差が生じることになります。

信用力が高い企業に対しては融資利率は低く、信用力が低い企業に対しては融資利率は高くなることが一般的です。

信用度が低い企業にとって高い利率を適用されると返済が難しくなると考えることもできますが、信用度が高い企業こそ安く資金を調達することが可能になっているのです。

また金融機関側からすれば、信用力の高い企業にはたくさんの金融機関が融資をしたい考えているので、他の金融機関との競争上、少しでも低い金利を提示して競争に勝ち抜きたいという面もあると思われます。

 

 

(2) 融資金利の上限

以前は出資法と利息制限法という2つの法律の間で上限金利が異なっており、グレーゾーン金利(旧出資法の上限金利上利息制限法の上限金利以下の金利)して社会問題になったことがありました。

現在では、銀行であれ、ノンバンクであれ、年率20.0%以上の利率を適用することはできません

また、利息制限法では、融資金額によって以下のような制限を定めています。

貸付金額  上限利率
10万円未満 年20.0%
10万円以上100万円未満 年18.0%
100万円以上 年15.0%

(3) 利息計算の方法

融資の利息計算は、

「融資された元本金額」×「実質年率」×「融資期間」÷365日=「利息」

が、基本的な計算式になります。

しかし、返済の種類によって利息計算方法が異なりますので、注意が必要です。

① 元利金等返済方式

元利均等返済方式とは、毎回の支払における返済額(元金と利息を合わせた金額)が一定になるような返済方法のことです。

毎月の返済金額が完済まで一定のため無理をせずに返済することが可能な点はメリットですが、返済の最初の頃の返済額における利息の割合が多いため元金分の減少が遅くなってしまうことがデメリットです。

② 元金均等返済方式

元金均等返済方式とは、毎回の支払において元金が一定になる返済方法のことです。

元金が均等に減っていくので、元利均等返済と比べると、返済する利息の総額が少なくなることがメリットです。ただし、支払を開始した当初は返済額が多くなってしまう点がデメリットです。

③ 元利定額リボルビング方式

元利定額リボルビング方式とは、毎月○万円など、毎月決まった金額(元金+利息)を支払う方法のことです。

④ 元金定率リボルビング方式

元金定率リボルビング方式とは、毎月○万円など、毎月決まった金額(元金+利息)を支払うが、借入残高によって、利率が変わる方法のことを言います。

⑤ 残高スライドリボルビング方式

残高スライドリボルビング方式とは、毎月○万円など、毎月決まった金額(元金+利息)を支払う方法ですが、毎月一定額の元金と借入残高に対する利息を返済する「残高スライド元金定額リボルビング方式」、借入の残高によって定率が見直される「残高スライド元利定率リボルビング方式」、借入残高によって、定額+利息が見直される「残高スライド元利定額リボルビング方式」、の3種類があります。

 

 

融資の実行主体の違いによる利率の差

(1) 公的融資

政府系金融機関(日本政策金融公庫、など)による融資の利率は民間の金融機関などに比べると低利であることが一般的です。

これは、資金調達方法が、財政融資資金借入金、政府保証債、財投機関債、政府出資金、などによる方法で調達しているため民間よりも安く調達できていることが理由です。

また、民間のように利益を得ることよりも国民の生活に寄与することを目的としているため、借主が返済しやすいように制度を構築していることも低利融資となっている理由です。

 

(2) 銀行などの民間金融機関

融資の際の主役となる金融機関と言えます。

公的融資とは異なり、利益を獲得することを目的としているため、市場の動向に合わせて(自行の資金調達コストを十分に加味して)融資の利率を決定することになります。

融資先の信用度や融資の種類(ローンのタイプ)などによっても融資の利率は異なりますが、通常では、公的融資に次いで低利なことが多いと思われます。

また、銀行以外の金融機関については、体力の差が融資金利の差に繋がっていることもあります。

都市銀行や地方銀行が最も金利が低く、信用金庫、信用組合、の順に融資の利率は高くなることが一般的です。

その他に系統金融機関(農協や漁協まど)による融資もありますので、信用組合などと融資の利率を比較してみることも有益かもしれません。

 

(3) ノンバンク

ノンバンクによる融資の利率は一般的には高い利率になることが多いです。

銀行などから融資を受けて、融資先に融資をするので、調達コストが高くなってしまうことで高い利率を適用せざるを得ないような構造になっています。

ただし、審査基準は銀行に比べると緩くなっており、高い利率でも資金調達をしなければならない企業にとっては助かる存在となっています。

 

融資利率まとめ

適切な融資の利率を設定することは、融資というビジネスを推進するうえで非常に大切なことです。

融資先の状況に対して利率を検討することと同様に、融資元である金融機関の調達コストも踏まえて適用利率を決定することが需要です。

借主としては、このような金融機関の調達状況によっても適用利率が変わることを認識しておく必要があります。

なお、金融機関からの融資が受けられない、受けたくないが資金調達をしたい場合にはファクタリングという手段もあります。

融資に比べて手数料が高いので手元に残る金額は少なくなりますが、融資とは異なる資金調達手段の一つとして覚えておくといいでしょう。